NEW

中国:2025~26年の経済見通し -25年「+5%前後」成長は可能だが、年後半は減速感が強まる見込み

2025年08月22日

(三浦 祐介) 中国経済

1.中国経済の見通し

中国の2025年4~6月期の実質GDP成長率は、前年同期比+5.2%と、前期(25年1~3月期)の同+5.4%から減速した(図表1)。需要項目別にみると、純輸出が引き続き堅調に推移したほか、経済対策の下支え等により内需が改善した(図表2)。単月の指標をみると、7月になり投資が急減速する等、内需に悪化の兆しがみられる一方、外需は改善している(図表3)。

今後を展望すると、引き続き、米中摩擦、不動産不況、経済政策の動向がポイントとなる。米中摩擦に関しては、5月から交渉が始まり、直近では8月12日に、双方が一時停止中の関税措置の発動を90日間再延長することが決まった。少なくとも当面は、関税合戦が再激化する可能性は低く、米国の対中関税は現在の水準(30%)が続くことを想定しているが、迂回輸出の制約が強まり、輸出は悪化に転じるだろう。不動産不況に関しては、足元でじわじわと悪化している。今後、都市再開発による需要の下支えが進むとみられるが、年後半に不動産販売の悪化が予想される。国内の経済対策に関しては、1~6月までは効果を表しているが、足元では息切れ感がみられる。家計のマインドは依然弱く、足元では製造業を中心に過当競争対策が強化され始めており、消費や投資の勢いは今後鈍るだろう。

以上を踏まえ、中国の実質GDP成長率は、25年から26年にかけて、それぞれ+4.7%、+3.8%と予想する(図表4)。国内経済対策や迂回輸出による米中摩擦の影響軽減により上期の実績が好調だったため、25年の「+5%前後」の成長率目標は、達成圏内にある。だが、上述の通り年後半には、内需、外需ともに減速感が強まる可能性が高い。現状、中国指導部は追加経済対策に対して様子見姿勢だが、可能性は排除していない。当面は、8月から9月にかけての経済情勢が注目される。

2.実体経済の動向

2.実体経済の動向

(生産・投資・外需)
生産の動向について、7月の前年同月比の伸び率(実質)をみると、鉱工業部門では、前月から伸びが低下した(図表5)。鉄鋼や一般設備では伸びが高まったのに対して、自動車や電気機械、コンピュータ・通信設備等では伸びが低下した。サービス業部門では、伸びが前月から小幅に低下した。情報通信・ソフトウェア・ITや金融では伸びが高まった一方、リース・ビジネスサービスは伸びが低下した。

PMI調査の結果をみると、製造業では、25年2月から3月にかけて改善したが、4月以降は景気の好不況の境目である50を下回る水準で推移している(図表6)。サービス業では、25年に入り50をやや上回る水準で推移を続けてきたが、7月には50ちょうどの水準まで低下した。同調査で需要不足と回答する企業の比率は、24年7月以降、具体的には発表されておらず、25年7月には定性的な説明もなされていないため、詳細は不明となっているが、需要不足が続いているものとみられる。
投資の動向について、7月の固定資産投資の前年同月比伸び率(名目、以下同)は、前月に続き大きく低下し、マイナスとなった(図表7)。業種別にみると、製造業、インフラ投資とも伸びが低下し、不動産開発投資はマイナス幅が拡大した。設備投資は、これまでの2桁の伸びが1桁まで急低下した。国家統計局は、一部地方での酷暑や豪雨、複雑な外部環境、国内の過当競争、企業の投資収益低下のほか、経済構造転換に伴う従来型産業の投資鈍化を新興産業が十分にカバーできていないことが影響していると説明している。

外需の動向について、7月の輸出(ドル建て)の伸びは、前月に続き高まった(図表8)。国・地域別では、米国向けでマイナス幅が拡大した。ASEAN向けは高水準で推移しており、迂回輸出は続いているとみられる。EU向けは伸びが上昇、日本向けは低下した。財別では、鉄鋼や機械設備、半導体、医療機器で改善した一方、コンピュータ・同部品、携帯電話、液晶パネル、自動車は悪化した。輸入(ドル建て)は、伸びが高まった。貿易収支は、約980億ドルの黒字となり、前年同月比で増加した。
(消費・家計)
消費の動向について、小売売上高の伸びをみると、7月は前月から低下した(図表9)。財の伸びが低下した一方、外食サービスはわずかに改善したが低水準の伸びにとどまっている。

一定規模以上企業を対象にした統計で財の品目別の動向をみると、衣類等で伸びが低下した一方、化粧品や宝飾品は伸びが高まった(図表10)。耐久消費財の買い替え支援策の対象となっている商品は、引き続き高水準の伸びを続けているが、家電・AV機器や(タブレットを含む)オフィス用品、家具では伸びが低下した。自動車は、価格低下の影響でマイナスに転じた。通信機器はわずかに伸びが高まった。不動産関連の財(建築・内装材)の伸びは小幅ながらマイナスに転じた。
家計の状況について、都市部の調査失業率は、25年3月以降、低下傾向にあったが、7月は前月から上昇した(図表11)。16~24歳(在学中の学生を除く)の失業率は、25年中、前年を上回る水準で推移しており、7月には卒業シーズンを迎え、再び急上昇した。若年層の雇用環境は依然厳しい状況にある。消費者信頼感指数をみると、依然として楽観・悲観の境目の水準である100を下回る水準で推移しており、雇用・所得の先行きは、5月から6月にかけて悪化した(図表12)。

経済研究部   主任研究員

三浦 祐介(みうら ゆうすけ)

研究領域:経済

研究・専門分野
中国経済

経歴

【職歴】
 ・2006年:みずほ総合研究所(現みずほリサーチ&テクノロジーズ)入社
 ・2009年:同 アジア調査部中国室
 (2010~2011年:北京語言大学留学、2016~2018年:みずほ銀行(中国)有限公司出向)
 ・2020年:同 人事部
 ・2023年:ニッセイ基礎研究所入社
【加入団体等】
 ・日本証券アナリスト協会 検定会員

レポートについてお問い合わせ
(取材・講演依頼)