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英国雇用関連統計(25年7月)-週平均賃金は前年比4.6%まで低下

2025年08月13日

(高山 武士) 欧州経済

1.結果の概要:週平均賃金は前年比4.6%まで低下

8月12日、英国国家統計局(ONS)は雇用関連統計を公表し、結果は以下の通りとなった1
 

【7月】
失業保険申請件数2前月(170.16万件)から0.62万件減の169.54万件となった(図表1)。
申請件数の雇用者数に対する割合は4.4%となり、前月(同4.4%)と同じだった。
給与所得者数3前月(3029.42万人)から0.8万人減の3028.58万人となった。増減数は前月(▲2.6万人)から減少幅が縮小し、市場予想4(▲2.0万人)を上回った。

【6月(25年4-6月の3か月平均)】
失業率は4.7%で前月(4.7%)から横ばい、市場予想(4.7%)と一致した(図表1)。
就業者は3421.4万人で3か月前の3397.5万人から23.9万人増加した。増減数は市場予想(18.5万人)を上回り、前月(13.4万人)から拡大した。
・週平均賃金は前年比4.6%で前月(5.0%)から低下、市場予想(4.7%)を下回った(図表2)。

 
1 労働力調査ベースの統計については、回答率の低下を受け、ONSでは開発中の公式統計という位置付けで公表されている。
2 求職者手当(JSA:Jobseekerʼs Allowance)、国民保険給付(National Insurance credits)を受けている者に加えて、主に失業理由でユニバーサルクレジット(UC)を受給している者の推計数の合算。なお、UCはJSAより幅広い求職手当てであり、失業者数を示す統計としては過大評価している可能性がある。このため、ONSは開発中の公式統計という位置付けで公表している。
3 歳入関税庁(HRMC)の源泉徴収情報を利用した統計。直近データは約85%のデータから推計。
4 bloomberg集計の中央値。以下の予想値も同様。

2.結果の詳細:定期賃金の伸びは前年比5.0%と横ばいで、3か月前比年率は4.7%に加速

まず7月のデータの求人数を確認すると、求人数が25年5-7月の平均で71.8万件と減少傾向が続いている(図表3)。なお、7月単月の求人数(未季調値)は74.5万件だった。

同じく7月データの給与所得者は、7月(速報値)の前月差で▲0.8万人となり、6か月連続での減少となった(なお、過去の数値は総じて改善方向に改定され、6月▲4.1→▲2.6万人、5月▲2.5→▲2.2万人、4月▲2.3→▲1.7万人、3月▲2.7→▲2.5万人などとなった)。産業別には卸・小売、専門・技術サービスの減少が目立つ一方、事務・支援サービスなどが前月対比で増加した。給与所得者増減を流出入別に見ると、流出数は横ばい圏の動きだが、流入の減少傾向が継続している(図表4)。7月の給与額(中央値)伸び率は前年比5.7%となり5月(5.8%、改定前は5.6%)からやや低下した。なお、平均給与額は6月で前年比3.6%とかなり低下が進んでいる(図表5)。
労働力調査ベースの数値は、4-6月期の失業率で4.7%となり、前期の4.7%から横ばいとなった(前掲図表1)。就業者が増加、非労働力人口が減少、失業者が微減で、労働参加率は63.8%まで上昇、コロナ禍後のピークを更新した。
労働時間は31.9時間(前年差▲0.1時間)、フルタイム労働者で36.6時間(同±0時間)となった(前掲図表2)。名目賃金は前年比で4.6%となり、前月(5.0%)からやや低下した。ボーナスを除く定期賃金伸び率は前年比5.0%と前月(5.0%)から横ばい、市場予想(5.0%)と一致した。同数値を3か月前比年率で見た賃金上昇の勢いは4.7%(前月4.1%)と加速した。なお、民間部門の賃金上昇率が前年比4.7%(前月5.0%、ボーナス除きは4.8%)、公的部門が同5.3%(前月5.3%、ボーナス除きは5.7%)で公的部門の伸びが民間部門の伸びを上回った状況が続いている。実質ベースの伸び率は、ボーナス含みで前年比0.5%(前月1.0%)、ボーナスを除きで同0.9%(前月1.1%)といずれも減速した。

処遇改善を求めたストライキは、6月は件数ベースで52件(5月44件)、労働損失日数で3.8万日(5月3.7万日)となっており、低水準での推移が続いている(図表6)。
 

経済研究部   主任研究員

高山 武士(たかやま たけし)

研究領域:経済

研究・専門分野
欧州経済、世界経済

経歴

【職歴】
 2006年 日本生命保険相互会社入社(資金証券部)
 2009年 日本経済研究センターへ派遣
 2010年 米国カンファレンスボードへ派遣
 2011年 ニッセイ基礎研究所(アジア・新興国経済担当)
 2014年 同、米国経済担当
 2014年 日本生命保険相互会社(証券管理部)
 2020年 ニッセイ基礎研究所
 2023年より現職

 ・SBIR(Small Business Innovation Research)制度に係る内閣府スタートアップ
  アドバイザー(2024年4月~)

【加入団体等】
 ・日本証券アナリスト協会 検定会員

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