2022年当時、歓送迎会の開催に対して否定的な空気が強まっていた背景には、単に個人の優先順位や価値観だけでなく、「コロナ禍」が大きく影響していた。多くの人々が感染症対策に努め、大人数での会食や宴会が公的・私的を問わず自粛されていた中、たとえそれが会社の行事であったとしても、「会食をする」という行為そのものが"社会的に褒められることではない"と広く認識されていた。
さらに、新型コロナウイルスに感染することで、自分自身の行動が制限されたり、重い症状に苦しむリスクを負うことになる。そのようなリスクを抱えてまで、会社側が「例年行っているから」「せっかくだから」といった理由で、従業員に歓迎会の参加を提案する姿勢は、無責任に映ることもあっただろう。「たかが会社の飲み会のために、自分の健康や生活が軽んじられてしまうのか」という不信や怒りを覚えた人も少なくないはずだ。
また、CSR(企業の社会的責任)の観点から見ても、当時のような状況下で不用意に飲み会を開催すれば、世間から「感染対策を軽視している企業」としての印象を持たれかねない。実際にそのような行為が明るみに出れば、企業の評判や信頼を損なうリスクもあった。そうした社会的影響を十分に考慮せずに「とりあえず毎年やっているから」と、従来の慣習に従って提案してきた会社に対し、失望や反発の声が上がったのも無理はない。
このように、2022年当時は「飲み会」という行為そのものに、感染リスクや社会的批判というマイナスの要素が色濃く結びついていた。単なる"職場のコミュニケーション"の一環というよりも、それを提案すること自体が倫理的・社会的な責任を問われる時代だったのである。
一方で、その「新型コロナウイルスの流行」が会社での飲み会に期待する要因となっている層もいる。筆者が行ったヒアリング調査では、2024年に新入社員として入社したZ世代の中には、大学時代にサークルやゼミでの飲み会が「新型コロナ流行」を理由に、ほとんど開催されなかったことから、「会社で初めて本格的な飲み会に参加できる」といった期待感を抱いている者も見受けられた。飲み会文化に対する経験の少なさが、かえって肯定的なイメージにつながっている側面があるといえる。
他にもR&C株式会社が、全国の20~50代の社会人男女1,000人を対象に実施した「飲み会に関する意識調査
6」では、「飲み会は好きか嫌いか」聞いているが、職場の飲み会が「好き」と回答した人は38.8%(「好き:16.2%、どちらかといえば好き:22.6%)、「嫌い」と回答した人は31.3%(嫌い:13.8%、どちらかといえば嫌い:17.5%)だった。年代別に見ると、「好き」と「どちらかといえば好き」を合わせたポジティブな意見が最も多いのは20代(46.0%)だった。
この結果からは、「若者=飲み会嫌い」という一元的なイメージは必ずしも当てはまらないことがわかる。むしろ、飲み会に対する経験が少ない若年層ほど、会社の飲み会を新鮮で楽しみなものと感じている傾向もある。また、50代は「嫌い」(16.0%)、「どちらかといえば嫌い」(20.0%)が最も多く、上の世代ほど飲み会文化に慣れているぶん、「コロナ禍でやらなくて済んだなら、このまま続けなくてもいい」と感じたり、自分の時間を優先したいという気持ちが強くなるのかもしれない。