保険研究部 取締役 研究理事 兼 ヘルスケアリサーチセンター長
松澤 登(まつざわ のぼる)
研究領域:保険
研究・専門分野
保険業法・保険法|企業法務
関連カテゴリ
リンクを使用した後7日内にアプリ事業者のサイトで行われるデジタル商品とサービスの取引に対して27%の手数料を要求する。
Apple社内では、地裁判決後、どのように差止に対応するかの遵守方針の検討が始まった。高裁が差止命令停止を命令したときに、いったん検討は停止したが、2023年4月24日の高裁の判決を受けて、遵守方針の検討を再開した(コードネームWisconsin)。① 外部リンク資格制度において、外部リンクは、アプリ内での商品購入フローの途中のページおよび商品購入ページに表示してはならない。
ゲームアイテムを購入できるショップがアプリ内にある場合、そのショップに外部リンクを貼ることは許されない。Appleはこの様な取扱いはセキュリティリスクから利用者を保護するためのものと主張している。どこに外部リンクを貼ってもセキュリティリスクが変わることはないので、これは言い訳に過ぎない。② 外部リンク資格制度においては、外部リンクをボタンまたはこれに類するものとして表示することを禁止している。
差止命令ではこのような表示の仕方を可能にするよう要求しているにもかかわらず、Appleはその反対のことを行った。すなわち、外部リンク資格制度においては、単純なリンク表示のみをすることとされている。Apple自身の証人も競争を抑制する以外にリンク形式を求める理由は思いつかないとしている。③ 外部リンク資格制度において、外部リンクを押すと、全画面表示で「本当に続けますか?」という警告文が表示され、アプリを離れることが警告される。その際、遷移(遷移とは閲覧するページから別のページに移ること)先はアプリ名ではなく、アプリ事業者名で表示される。また、購入はアプリ事業者が管理するものであって、Appleは関与していないと表示される。
この表示方法は、i)外部リンクを単純に表示すること、ii)ブラウザを開くことをポップアップで表示することと並んで検討されたが、もっとも反競争的な選択肢(=全画面表示)が採用された結果によるものである。④ 外部リンク資格制度においては、静的URLのみ利用可能とされている。
静的URLはそのアドレスへ遷移するだけの機能しか持たない。比較して、動的URLではユーザーIDや位置情報その他の操作に関する情報を付加することができる。そうすると、動的URLではユーザーを識別し、リンククリックによって自動ログインすることができる。Appleはこの制限をデータセキュリティのためと主張するが、同時に摩擦(friction=購入に至るまでに発生する操作上の障害)を増加させることで破損(breakage=購入者が外部リンクからの購買をあきらめること)を増加させることをよく理解していた。⑤ 外部リンク資格制度においては、Appleが用意したテンプレートの表現以外を使用することが禁止されている。
表示可能なのは、「www.example.comのwebサイトで購入する」というものだけである。低価格であることを訴求する文言を載せることは不可能であり、このことによりAppleは数億ドルの収益損失を回避している。⑥ 外部リンク資格制度において、ビデオパートナーシッププログラム(VPP)およびニュースパートナーシッププログラム(NPP)に参加しているユーザーは事実上適用外となる。
VPPにはディズニープラスといったサブスクリプションビデオアプリがあり、NPPにはニューヨークタイムズといった新聞社のアプリがある。これらユーザーに対する手数料は、通常の30%ではなく、15%になっている。しかし、これらユーザーが外部購入リンク制度を利用すると、アプリ内購入の手数料が15%から30%に引き上げられる。4――Apple申立てに関する判断
保険研究部 取締役 研究理事 兼 ヘルスケアリサーチセンター長
研究領域:保険
研究・専門分野
保険業法・保険法|企業法務
【職歴】
1985年 日本生命保険相互会社入社
2014年 ニッセイ基礎研究所 内部監査室長兼システム部長
2015年4月 生活研究部部長兼システム部長
2018年4月 取締役保険研究部研究理事
2021年4月 常務取締役保険研究部研究理事
2025年4月より現職
【加入団体等】
東京大学法学部(学士)、ハーバードロースクール(LLM:修士)
東京大学経済学部非常勤講師(2022年度・2023年度)
大阪経済大学非常勤講師(2018年度~2022年度)
金融審議会専門委員(2004年7月~2008年7月)
日本保険学会理事、生命保険経営学会常務理事 等
【著書】
『はじめて学ぶ少額短期保険』
出版社:保険毎日新聞社
発行年月:2024年02月
『Q&Aで読み解く保険業法』
出版社:保険毎日新聞社
発行年月:2022年07月
『はじめて学ぶ生命保険』
出版社:保険毎日新聞社
発行年月:2021年05月