コラム

投資部門別売買動向(25年4月)~海外投資家・個人ともに売り越すなか事業法人が買い越し~

2025年05月08日

(森下 千鶴) 株式

2025年4月の日経平均株価は、トランプ米大統領による相互関税の発表を受けて月初から急落した。7日には3万1,137円まで下落し、下落幅は過去3番目となる2,644円安を記録した。その後は、関税発動の90日間延期や米中対立の緩和期待が好感され、指数は急反発した。中旬は半導体規制が重石となったもののTSMCの好決算が下支えとなり、日経平均株価は3万3,000円台から3万4,000円台で推移した。月末にかけては米株高や円高進行が一服したことから、日経平均株価は23日から30日まで5日続伸した。30日には3万6,000円台を回復し、3万6,045円と3月末の水準を上回って取引を終えた。投資部門別では、事業法人と信託銀行が買い越す一方で、個人と海外投資家は売り越した(図表1)。
2025年4月(3月31日~4月25日)の投資部門別の売買動向をみると、事業法人が現物と先物の合計で9,334億円の買い越しと、4月最大の買い越し部門であった。週単位で見ても、全ての週で買い越しが続いた(図表2)。
2024年度(2024年4月~2025年3月)の自社株買い設定額(TOPIX構成銘柄)は18.7兆円と過去最大となった。2025年度に入ってもこの傾向は継続しており、2025年4月の設定額は3.8兆円と前年同月の約3倍に拡大している。株主還元の強化や政策保有株の縮減に加え、4月の株価急落も自社株買い増加の背景と考えられる。事業法人の自社株買いが日本株式の需給を下支える動きは今後も続きそうだ(図表3)。
4月は信託銀行も現物と先物の合計で1,705億円の買い越しとなった(図表4)。
一方、個人は現物と先物の合計で2,447億円の売り越しと、4月最大の売り越し部門であった。週単位で見ると、第1週(3月31日~4月4日)は7,278億円の買い越しとなったが、第2週から第4週(4月7日~25日)は3週連続で売り越した。第1週は米国の相互関税発表を受けてリスクオフ姿勢が強まったことで、日経平均株価は週間で約3,300円下落した。その後は月末にかけて株価が反発に転じたことから、個人は株価の下落局面で買い上昇局面で売る「逆張り投資」の姿勢が見られた(図表5)。
また、4月は海外投資家も現物と先物の合計で988億円の売り越しと、小幅に売り越した。週単位で見ると、第1週と第2週(3月31日~4月11日)はそれぞれ7,739億円、1940億円の売り越しとなったが、米中貿易摩擦懸念の後退などを背景に第3週と第4週(4月14日~25日)はそれぞれ3,451億円、5,242億円の買い越しに転じた(図表6)。

金融研究部   研究員

森下 千鶴(もりした ちづる)

研究領域:医療・介護・ヘルスケア

研究・専門分野
株式市場・資産運用

経歴

【職歴】
 2006年 資産運用会社にトレーダーとして入社
 2015年 ニッセイ基礎研究所入社
 2020年4月より現職

【加入団体等】
 ・日本証券アナリスト協会検定会員
 ・早稲田大学大学院経営管理研究科修了(MBA、ファイナンス専修)

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