トランプ関税発の円高は止まるか?~マーケット・カルテ5月号

2025年04月18日

(上野 剛志) 金融市場・外国為替(通貨・相場)

今月初めに1ドル149円台後半でスタートしたドル円は、その後急速に円高ドル安が進んだ。トランプ米大統領が2日に世界各国からの輸入品に対する大規模な関税(いわゆる「相互関税」)を発表し、中国との間で関税引き上げの応酬に発展したことが主因だ。米景気減速懸念の高まりによってドルが売られたうえ、リスク回避的な円買いが発生した。さらに17日には日米関税交渉での米国側からの円安是正要求が警戒され、141円台を付ける場面があった。結局、為替を巡る議論はなかったことから円買いがやや巻き戻され、足元では142円台前半にある。

今後のドル円について、当面は引き続きリスク回避的な円高圧力が燻ると思われる。しかし、9日に相互関税の上乗せ分が一時停止されるなど、米政権が金融市場や米経済への過度の悪影響を危惧して関税を一部緩和したとみられる事例も見受けられるため、白紙撤回はないにせよ、相手国の譲歩を口実に関税を緩和する動きが次第に出てくると想定される。不確実性が高いことは否めないが、夏場にかけて一部関税が緩和されることで一旦リスク選好的な円安の動きが起きるだろう。ただし、関税引き上げによる米景気の減速やFRBの利下げ実施、米政権による円安是正要求への警戒がドルの上値を抑えるため、3ヵ月後の水準は145円前後に留まると予想している。さらに、円安の動きは一時的となり、その後はFRBの利下げ継続等を受けて再び円高基調に復すると見ている。

月初1.5%近辺でスタートした長期金利は、米政権による大規模な関税引き上げに端を発する世界的な景気減速懸念を受けて、一時1.1%近辺へと急低下した。安全資産需要の高まりと日銀利上げ観測の後退が金利低下圧力となったためだ。その後はやや戻したものの、足元でも1.3%付近と月初の水準をかなり下回っている。

今後は既述の通り、夏場にかけて一部関税が緩和されることで一旦リスク選好的な地合いとなり、金利上昇圧力が高まりそうだ。しかし、内外経済の減速懸念が燻ることや、日銀が利上げを見合わせることが金利抑制要因となり、上昇余地は限られるだろう。3か月後の水準は1.4%前後と予想している。
 
(執筆時点:2025/4/18)

経済研究部   主席エコノミスト

上野 剛志(うえの つよし)

研究領域:金融・為替

研究・専門分野
金融・為替、日本経済

経歴

・ 1998年 日本生命保険相互会社入社
・ 2007年 日本経済研究センター派遣
・ 2008年 米シンクタンクThe Conference Board派遣
・ 2009年 ニッセイ基礎研究所

・ 順天堂大学・国際教養学部非常勤講師を兼務(2015~16年度)

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