2024~2026年度経済見通し

基礎研REPORT(冊子版)4月号[vol.337]

2025年04月08日

(斎藤 太郎) 日本経済

1―2024年はほぼゼロ成長

2024年10-12月期の実質GDPは前期比0.6%(前期比年率2.2%)と3四半期連続のプラス成長となった。物価高の悪影響が続く中、所得税・住民税減税の効果が一巡したことから、民間消費は前期比0.0%の横ばいにとどまった。高水準の企業収益を背景に設備投資は前期比0.6%の増加となったが、民間在庫変動が前期比・寄与度▲0.3%のマイナスとなったことから、国内需要は前期比▲0.2%と3四半期ぶりに減少した。一方、輸出が前期比1.0%と3四半期連続で増加する中、輸入が前期比▲2.1%の減少となり、外需が前期比・寄与度0.7%のプラスとなったことが成長率を大きく押し上げた。

2024年10-12月期の実質GDPはコロナ禍前(2019年平均)の水準1.7%上回った。しかし、民間消費、住宅投資がそれぞれコロナ禍前を▲0.4%、▲10.9%下回るなど、家計部門は回復が遅れている。

2024年(暦年)の実質GDPは前年比0.1%とほぼゼロ成長にとどまった。設備投資(前年比1.2%)、公的需要(同0.5%)の増加が成長率を押し上げたが、家計部門が低調だった(民間消費:前年比▲0.0%、住宅投資:同▲2.4%)。

2―春闘賃上げ率は2年連続の5%台を予想

連合の「2025春季生活闘争 要求集計結果」によれば、2025年の賃上げ要求は平均6.09%と前年を0.24ポイント上回り、1993年(7.15%)以来の高水準となった[図表1]。実際の回答は要求を下回るが、2024年春闘では要求5.85%に対し、回答5.10%と下振れ幅は0.75ポイントと比較的小さかった。2025年春闘においても、すでに満額回答する企業が相次いでおり、要求からの下振れ幅は前年に続き小さなものとなる公算が大きい。

また、組合員300人未満の中小組合の賃上げ要求は平均6.57%と前年を0.60ポイント上回った。連合は2025年春闘の基本構想で、賃上げ要求を2024年に続き5%以上(定期昇給相当分を含む)、中小労働組合は格差是正分を積極的に要求するとしていた。2025年春闘における中小企業の要求水準の高さはこれに沿ったものとみることができる。中小企業は要求水準が大企業よりも高く、回答は大企業よりも低くなる傾向があるため、最終的な中小企業の賃上げ率は大企業を下回るだろう。しかし、その格差は前年よりも縮小することが見込まれる。

今回の見通しでは、2025年の春闘賃上げ率を5.20%と2年連続で5%台の高水準を維持することを想定した。
名目賃金を消費者物価で割り引いた実質賃金は2022年4月から前年比マイナスが続いていたが、2024年6月に2年3ヵ月ぶりにプラスに転じた後は、プラスとマイナスを繰り返している。実質賃金上昇率がプラスとなる月はいずれも特別給与(ボーナス)の大幅増加が主因となっており、安定的な動きをする「きまって支給される給与(所定内給与+所定外給与)」は依然としてマイナス圏で推移している[図表2]。
名目賃金は高めの伸びが続くことが見込まれるが、ボーナスが支給される夏場までは、実質賃金の伸びはマイナスが続く公算が大きい。実質賃金上昇率が持続的・安定的にプラスとなるのは、現在4%台となっている消費者物価上昇率(持家の帰属家賃を除く総合)が3%程度まで鈍化することが見込まれる2025年7-9月期以降と予想する[図表3]。

3―GDP成長率の見通し

2024年10-12月期のプラス成長の主因は輸入の減少に伴う外需のプラス寄与で、国内需要は3四半期ぶりの減少となった。景気の実態は成長率が示すほど強くない。

2025年1-3月期は民間消費、設備投資を中心に国内需要が増加に転じるものの、外需が前期の反動でマイナスとなることから、実質GDPは前期比年率0.6%と前期から急減速する可能性が高い。

民間消費は伸び悩んでいるが、高い物価上昇が続く中でも、実質雇用者報酬が2024年4-6月期以降、3四半期連続で前年比増加となったことは、明るい材料といえる。足もとでは、米や生鮮食品などの価格高騰が消費者マインドの冷え込みにつながっているが、物価の上昇ペースが落ち着けば、雇用所得環境の改善を背景に民間消費は回復に向かうことが見込まれる。

また、設備投資は人手不足による供給制約が抑制要因となっているが、高水準の企業収益を背景に基調としては回復の動きが続いている。先行きについては、国内民間需要を中心に潜在成長率とされる0%台半ばを若干上回る年率1%前後の成長が続くだろう。

下振れリスクとしては、米国の関税引き上げを受けた世界経済の急減速、物価の上振れに伴う実質所得の低迷を主因とした消費の腰折れなどが挙げられる。

実質GDP成長率は2024年度が0.8%、2025年度が1.1%、2026年度が1.2%と予想する[図表4]。

4―消費者物価の見通し

消費者物価(生鮮食品を除く総合、以下コアCPI)は2023年9月以降、前年比で2%台の伸びが続いていたが、「酷暑乗り切り緊急支援」の終了に伴う電気・都市ガス代の上昇率急拡大を主因として2024年12月に前年比3.0%と1年4ヵ月ぶりの3%台となった。

電気・都市ガス代の「酷暑乗り切り緊急支援」は2024年10月使用分でいったん終了したが、「電気・ガス料金負担軽減支援事業」が2025年1~3月使用分で実施されることとなった(3月は補助額縮小)。ただし、値引き額は2024年夏よりも小さい。また、2024年末までとしていたガソリン、灯油等の「燃料油価格激変緩和対策」は、2025年入り後も継続されたが、補助金額は縮小された。ガソリン価格(レギュラー)は2024年12月中旬までは1リットル=175円程度だったが、2025年1月中旬以降は185円程度で推移している。エネルギー価格の上昇率は当面高止まりすることが見込まれる。

食料品(生鮮食品を除く)は2023年8月の前年比9.2%をピークに2024年7月には同2.6%まで鈍化したが、その後は輸入物価の再上昇に米価格の高騰が加わったことから再び上昇率が高まり、2025年1月は同5.1%となった。食料品値上げの動きはしばらく続く可能性が高いが、川上段階(輸入物価、国内企業物価)の食料品価格の上昇率は2023年夏頃に比べれば低水準にとどまっている。現時点では、消費者物価の食料品価格の上昇率は6%程度まで高まった後、頭打ちになると予想している。

サービス価格は2023年後半以降、2%台前半の伸びが続いていたが、2024年度入り後は1%台半ばまで伸びが鈍化している。しかし、サービス価格の動向を大きく左右する人件費は、高水準の賃上げを背景に増加が続くことが見込まれる。人件費や物流費を価格転嫁する動きが続くことから、サービス価格の上昇ペースは再び加速する可能性が高い。

コアCPI上昇率は、2025年前半にエネルギー、食料を中心に3%前後で高止まりした後、財価格の上昇率低下を主因として徐々に鈍化するが、2025年中は2%台で推移するだろう。賃上げに伴うサービス価格の上昇を円高による財価格の上昇率鈍化が打ち消す形でコアCPI上昇率が日銀の物価目標である2%を割り込むのは2026年入り後と予想する。

コアC P I は2 0 2 4 年度が前年比2.7%、2025年度が同2.4%、2026年度が同1.7%と予想する[図表5]。

経済研究部   経済調査部長

斎藤 太郎(さいとう たろう)

研究領域:経済

研究・専門分野
日本経済、雇用

経歴

・ 1992年:日本生命保険相互会社
・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
・ 2019年8月より現職

・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
・ 2018年~ 統計委員会専門委員

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