2|8つの提言の概要
ディスカッション・ペーパーに示されたAPRAの提言は以下の8つである。詳細は4節に記載するが、概要をまとめるものである。
1.取締役会に求められるスキルと能力について
以下を義務付ける:
-取締役会全体および個々の取締役(director)に対して、要求されるスキルと能力を明確にする。
-取締役会及び個々の取締役の既存のスキル及び能力を評価する。
-専門能力開発・後継者育成計画・任命等を通じて、要件と実際のギャップに対処するための措置を講じる。
2.適合性(fitness)と適正性(propriety)について
-責任者(responsible person)の適合性と適正性を確保するため、より高い最低要件を満たすことを求める。
-SFIs
4及び強化された監督下にある非SFIsに対し、取締役の任命案についてAPRAが積極的に関与することを求める。
3.利益相反管理について
・現行のRSEライセンシーの利益相反管理要件を銀行と保険会社にも拡大し、以下の事項を義務付ける:
-利益相反の事実や潜在的な利益相反と義務を積極的に特定する。
-利益相反の回避もしくは慎重な管理を実施する。
-利益相反が適切に開示または管理されていない場合、是正措置を講じる。
・利益相反の事実(actual)や潜在的(potential)な利益相反に加え、利益相反とみなされうる (perceived)ものも考慮するよう義務付ける。
4.独立性(銀行と保険会社のみ
5) について
以下の方法により、規制対象事業体の取締役会の独立性を強化する:
-独立取締役(independent directors)のうち少なくとも2名(議長を含む)は、グループ企業内の他の取締役会のメンバーでないことを義務付ける。
-独立性の基準について軽微な修正を加える。すなわち、規制対象の企業またはグループにおける実質株主である取締役について、独立性を有するものとして認めないという規定の適用範囲を、株式以外の有価証券の主要保有者にまで拡大する。
-銀行や保険会社の取締役会は過半数が独立取締役で構成されなければならないという現行の要件を、親会社がAPRA(および海外の同等な組織)から規制を受けている子会社の取締役会にも拡大する。
5.取締役会のパフォーマンス評価について
SFIに対し、少なくとも3年ごとに、取締役会、委員会、個々の取締役を対象とした、独立した第三者によるパフォーマンス評価を受けることを義務付ける。
6.役割の明確化について
-APRAが取締役会、議長、上級管理職に要求する主な事項を定義する。
-APRAの要求事項のうち、取締役会の委員及び上級管理職に委譲できる要件について、追加ガイドラインを提供する。
7.取締役会の委員会について
-銀行と保険会社の取締役会に対して、リスク委員会と監査委員会を別個に設置することを求める現行の要件を、SFIのRSEライセンシー
6にも拡大する。逆にSFI以外の銀行・保険会社については、この要件を廃止し、小規模な事業体に柔軟性を持たせる。
-APRAが要求する取締役会委員会の議決権を有するものは取締役会の委員のみとし、アドバイザーなどは含めないこととする。
8.非常勤取締役(non-executive directors)の任期と取締役会メンバーの刷新について
-非常勤取締役
7の在任期間の上限を原則10年とする。
-取締役会メンバーの刷新に向けた、堅実で将来を見据えたプロセスの確立を義務付ける。
4 Significant financial institution:重要な金融機関
5 スーパーアニュエーション業界については、独立性は SIS 法で定義されている。
6 SIS 法第 10 条(1)に定義される、登録可能なスーパーアニュエーション・エンティティのライセンシー(Registrable superannuation entity licensee)
7 non-executive directors