英国雇用関連統計（25年2月）－給与（中央値）伸び率は5.0％まで低下

2025年03月21日

（高山 武士） 欧州経済

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1．結果の概要：週平均賃金は前年比5.8％にやや低下

3月20日、英国国家統計局（ＯＮＳ）は雇用関連統計を公表し、結果は以下の通りとなった1。
 

【2月】
・失業保険申請件数2は前月（173.08万件）から4.42万件増の177.50万件となった（図表1）。
・申請件数の雇用者数に対する割合は4.7％となり、前月（同4.5％）からやや上昇した。
・給与所得者数3は前月（3041.2万人）から2.1万人増の3043.3万人となった。増減数は前月（0.9万人）から拡大し、市場予想4（▲2.1万人）を上回った。

【1月（24年11-25年1月の3か月平均）】
・失業率は4.4％で前月（4.4％）から横ばい、市場予想（4.4％）と一致した（図表1）。
・就業者は3392.2万人で3か月前の3377.8万人から14.4万人増加した。増減数は市場予想（9.1万人）を上回り、前月（8.8万人）から拡大した。
・週平均賃金は前年比5.8％で前月（6.1％）から低下、市場予想（5.8％）と一致した（図表2）。

 
1 労働力調査ベースの統計については、回答率の低下を受け、ＯＮＳでは開発中の公式統計という位置付けで公表されている。
2 求職者手当（ＪＳＡ：Jobseekerʼs Allowance）、国民保険給付（National Insurance credits）を受けている者に加えて、主に失業理由でユニバーサルクレジット（ＵＣ）を受給している者の推計数の合算。なお、ＵＣはＪＳＡより幅広い求職手当てであり、失業者数を示す統計としては過大評価している可能性がある。このため、ＯＮＳは開発中の公式統計という位置付けで公表している。
3 歳入関税庁（ＨＲＭＣ）の源泉徴収情報を利用した統計。直近データは約85％のデータから推計。
4 bloomberg集計の中央値。以下の予想値も同様。

2．結果の詳細：給与所得者の給与（中央値）伸び率は5.0％まで大幅に低下

まず2月のデータとして公表されている求人数および給与所得者数を確認すると、求人数が24年12-25年2月の平均で81.6万件となった。22年3-5月平均（130.4万件）をピークに減少してきたが、直近は横ばいで推移している（図表3）。なお、1月単月の求人数は78.7万件だった5。

給与所得者データは、2月の給与所得者数（速報値）が前月差で2.1万人増となり、2か月連続での増加となった（なお、過去の数値の改定は1月2.1→0.9万人、12月▲1.4→▲0.9万人）。産業別には製造業や居住・飲食サービスの前月差減少幅が大きい一方、事務・支援サービス、保健・社会事業サービスでは増加幅が大きかった。2月の給与額（中央値）伸び率は前年同月比5.0％となり、1月（6.0％）から大幅に低下した。
労働力調査ベースの数値は、24年11-25年1月期の失業率で4.4％となり、10-12月期の4.4％から横ばいとなった（前掲図表1）。就業者が増加し、失業者と非労働力人口が減少した。労働参加率は23年11月-24年1月期（62.7％）をボトムに緩やかな上昇傾向が続き、63.4％まで上昇した。
労働時間は31.9時間（前年差±0時間）、フルタイム労働者で36.5時間（同▲0.1時間）となった（前掲図表2）。名目賃金は前年比で5.8％となり、前月（6.1％）から低下した。ボーナスを除く定期賃金伸び率は前年比5.9％と前月（5.9％）から横ばい、市場予想（5.9％）と一致した。同数値を3か月前比年率で見た賃金上昇の勢いは6.5％（前月6.4％）と加速している。なお、民間部門の賃金上昇率が前年比5.9％（前月6.4％、ボーナス除きは6.1％）、公的部門が同5.3％（前月4.8％、ボーナス除きは5.3％）で民間部門の伸びは頭打ちとなったが、公的部門の伸びは上昇が継続している（図表5）。実質ベースの伸び率は、ボーナス含みで前年比2.1％（前月2.6％）、ボーナスを除きで同2.2％（前月2.5％）とやや低下した。

処遇改善を求めたストライキは、1月は件数ベースで63件（12月64件）、労働損失日数で5.0万日（12月5.1万日）となっており、低水準での推移が続いている（図表6）。
 
5 3か月平均のデータは季節調整値だが、単月データは未季節調整値のため季節性が除去されていないため留意が必要。

経済研究部   主任研究員

高山 武士（たかやま たけし）

研究領域：経済

研究・専門分野
欧州経済、世界経済

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経歴 ＋ －

【職歴】
　2006年　日本生命保険相互会社入社（資金証券部）
　2009年　日本経済研究センターへ派遣
　2010年　米国カンファレンスボードへ派遣
　2011年　ニッセイ基礎研究所（アジア・新興国経済担当）
　2014年　同、米国経済担当
　2014年　日本生命保険相互会社（証券管理部）
　2020年　ニッセイ基礎研究所
　2023年より現職

　・SBIR（Small Business Innovation Research）制度に係る内閣府スタートアップ
　　アドバイザー（2024年4月～）

【加入団体等】
　・日本証券アナリスト協会　検定会員

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