コラム

投資部門別売買動向(24年12月)~海外投資家は買い越し、個人は売り越し~

2025年01月15日

(森下 千鶴) 株式

2024年12月の日経平均株価は、上旬は米国のハイテク株高を好感して3日に3万9,248円まで上昇し、その後も3万9,000円台で堅調に推移した。中旬は18日の米FOMCで2025年利下げ見通しが4回から2回に修正されたことを受け米国株が軟調となり、日経平均株価も19日に3万9,000円を割り込み、20日には3万8,701円まで下落した。しかし下旬になると、植田日銀総裁のハト派発言を受け円安が一段と進行したことや、株主還元やROE目標などのニュースが好感された自動車株が指数をけん引し、日経平均株価は27日に4万281円まで上昇した。月末は年末年始休暇前の利益確定売りが優勢となり、3万9,894円で終えた。このように日経平均株価が推移する中、海外投資家、事業法人が買い越す一方で、個人、信託銀行が売り越した(図表1)。
2024年12月(12月2日~30日)の投資部門別の売買動向をみると、海外投資家が現物と先物の合計で1兆3,720億円の買い越しと、12月最大の買い越し部門であった(図表2)。
12月は事業法人も現物と先物の合計で5,798億円と43カ月連続で買い越した(図表3)。
一方で、個人は現物と先物の合計で12月に1兆5,134億円の売り越しと、最大の売り越し部門であった(図表4)。株価が下落したときは買いを入れ、株価が上昇したときは売るという「逆張り投資」の姿勢が目立った。特に第4週(12月23日~27日)は1兆50億円と大幅に売り越した。12月27日から実質新年度入りで新NISA経由の買いも入っていたと思われるものの、日経平均株価は4万円を超えて上昇するなかで、利益確定売りが優勢となったようだ。ただし、第5週(12月30日)は年末年始休暇前で市場全体では売りが優勢となり日経平均株価が約380円下落するなか、個人は買いが優勢となった。
また、12月は信託銀行も現物と先物の合計で3,570億円と売り越した(図表5)。
では、2024年の年間を通じての投資部門別売買動向にはどのような特徴があったのだろうか。2024年の主な買い越し部門は、事業法人(7.87兆円)であった。一方、主な売り越し部門は海外投資家(▲4.41兆円)、信託銀行(▲2.74兆円)、個人(▲1.62兆円)であった(図表6)。海外投資家、信託銀行、個人の売りを事業法人の買いが支えたことが確認できる。
図表7は、2024年の投資部門別の現物と先物の売買動向を週次で累積した結果である。海外投資家は、2024年前半は買いが優勢だったが、6月以降は売りが優勢となり10月まで5カ月連続で売り越した。特に、7月から9月の3カ月間は約6兆円と大幅な売り越しとなった。7月には日銀が政策金利を0.25%引き上げることを決定し、8月初旬には米国の経済指標の結果を受けて米リセッション懸念が急速に高まり、リスク資産を回避する動きから海外投資家の日本株の売りも加速した。その後、急速なリスクオフ姿勢は一旦落ち着いたものの、日米の金融政策の行方や9月の自民党総裁選、10月の衆議院選挙結果に対する先行き不透明感から海外投資家の売りが継続したと考えられる。
 
一方、事業法人は年間を通して買い越した。2024年の上場企業(TOPIX構成銘柄)の自社株買い設定額は17兆円に達しており、週次で見ると2024年は53週のうち事業法人が売り越した週はわずか5週であった。企業の資本効率の向上や株主還元の動きは継続しており、自社株買いの実施に伴う事業法人の買い越しは今後も続くと予想される。
 
 

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金融研究部   研究員

森下 千鶴(もりした ちづる)

研究領域:医療・介護・ヘルスケア

研究・専門分野
株式市場・資産運用

経歴

【職歴】
 2006年 資産運用会社にトレーダーとして入社
 2015年 ニッセイ基礎研究所入社
 2020年4月より現職

【加入団体等】
 ・日本証券アナリスト協会検定会員
 ・早稲田大学大学院経営管理研究科修了(MBA、ファイナンス専修)

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