首都圏中古マンション市場動向(2024年11月)~「成約件数横ばい・成約価格横ばい」の局面に移行。東京では新規登録価格と成約価格の逆転も

2024年12月19日

(渡邊 布味子) 不動産市場・不動産市況

首都圏中古マンション市場は「成約件数横ばい/成約価格横ばい」の局面へ

東日本不動産流通機構(東日本レインズ)によると、2024年11月の首都圏中古マンションの成約価格は5,022万円(前年同月比+6.1%)となり2ケ月ぶりに上昇した。成約価格は2020年6月から2024年7月まで50ケ月連続で前年同月比プラスを継続した後、上昇と下落を繰り返す一進一退の動きとなっている1。また成約件数は3,207件(前年同月比+10.6%)となり5カ月ぶりに増加した(図表1)。このように、首都圏中古マンション市場は、2024年上期までの「成約件数増加・成約価格上昇」から、足もとで「成約件数横ばい・成約価格横ばい」の局面へ移行している可能性がある2
 
1 なお、2024年11月の成約m2単価は前年同月比+5.9%となり55ケ月連続でプラスとなった。
2 成約価格の2024年上期平均は4,715万円(2023年下期比+4.7%)であったが、2024年8-11月平均は4,854万円(2024年上期比+2.5%)と減速している。

新規登録価格が急上昇

新規登録価格が急上昇。東京では高価格帯マンションの売れ行きが鈍化

成約価格が一進一退の動きとなる一方、新規登録価格は4,674万円(前年同月比+12.9%)と大きく上昇し、成約価格との差が縮小している。コロナ禍以降、成約価格は新規登録価格を一貫して上回って推移し、両者のかい離率は2024年4月に+19.6%まで拡大したが、10月は+0.8%、11月は+7.4%となった(図表2)。なかでも、これまで成約価格の上昇を牽引してきた東京では、8月と10月に新規登録価格と成約価格が逆転し、11月のかい離率は+2.2%となった(図表3)。今後の金利上昇リスクが意識されるなか、売主サイドの強気の価格設定に対して3、買主は物件価値を見極めるべくやや慎重姿勢を強めている可能性もありそうだ。
また、成約件数と新規登録件数から求めた新規成約率4の推移をみると、東京都では回復基調にあった高価格帯マンションの売れ行きがやや鈍化している(図表4)。2024年第3四半期(7-9月)の新規成約率は、「7,000万円以上1億円未満」が30%(前期比▲4.4%)、「1億円以上」が22%(同▲3.5%)に低下した(図表4)。新規登録物件の平均築年数が約30年に上昇し、成約物件の築年数(25年)とのミスマッチも見られるなか(図表5)、購入希望者が売主の価格設定に追随するか、今後の動向を注視したい。
 
3 従来ならレインズ登録前に取引の成立していた高価格帯のマンションが最終的にレインズに登録された結果、新規登録価格が急上昇した可能性もある。
4 当期の成約件数を前期の新規登録件数で割った数値。数値が高い(低い)ほど、売れ行きが好調(不調)であることを示す。

在庫価格が上昇

在庫価格が上昇する一方、在庫戸数は前年比で減少

続いて、在庫の動向を確認すると、2024年11月の在庫価格は首都圏が4,438万円(前年同月比+8.9%)、東京都が5,874万円(前年同月比+17.2%)となった(図表6)。新規登録価格の上昇にあわせて在庫価格も急上昇している。一方、在庫件数は首都圏が45,646戸(前年比▲2.9%)、東京都が23,632戸(前年比▲10.2%)となり減少傾向にある(図表7)。在庫価格が上昇するなか、売主サイドが価格調整に踏み出すかどうか、今後の在庫戸数の動向を含めて注目したい。
首都圏中古マンション市場は、新築マンションの供給減少や相対的な割安感などを背景に、2024年上期まで「成約件数増加・成約価格上昇」の局面が続いていたが、足もとで「成約件数横ばい・成約価格横ばい」の局面へ移行し、いったん踊り場を迎えた可能性がある。また、東京都では新規登録価格と成約価格の逆転や高価格帯マンションの売れ行きがやや鈍化するなど、これまでと異なる動きも確認される。来年以降、住宅ローン金利の上昇が予想されるなか、中古マンション市場の需給バランスや価格動向を注視する必要がありそうだ。
 
 

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金融研究部   准主任研究員

渡邊 布味子(わたなべ ふみこ)

研究領域:不動産

研究・専門分野
不動産市場、不動産投資

経歴

【職歴】
 2000年 東海銀行(現三菱UFJ銀行)入行
 2006年 総合不動産会社に入社
 2018年5月より現職
・不動産鑑定士
・宅地建物取引士
・不動産証券化協会認定マスター
・日本証券アナリスト協会検定会員

・2022年、2023年 兵庫県都市計画審議会専門委員

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