年金の「第3号被保険者」廃止論を3つの視点で整理する(前編)- 制度の概要と不公平感

2024年12月05日

(中嶋 邦夫) 公的年金

■要旨

国民年金の第3号被保険者の中期的な廃止が相次いで提言されているが、軽々には語れない難しい論点である。本稿(前後編)では、制度の概要を確認した上で、「不公平感」「就業抑制」「財源のあり方」の3つの視点に絞って整理を試みる。今回の前編では、制度の概要と不公平感を取りあげる。

■目次

はじめに
1 ―― 第3号被保険者制度の概要:厚生年金が優先適用され、30年前から一貫して減少
  1|誰が該当するか:
   厚生年金加入者に扶養される年収130万円未満の配偶者で、厚生年金に加入していない人
  2|どの程度の規模か:
   30年前のピークから約4割減少しており、女性においては20~59歳人口の約2割が該当
2 ―― 不公平感
 :無収入の第3号なら共働きと不公平なし。廃止は第3号世帯への逆進的なペナルティに
  1|現行制度の評価(1) なぜ保険料を負担しないのか:
   第3号被保険者が受け取る基礎年金は、配偶者(主に夫)の旧厚生年金から分割したものだから
  2|現行制度の評価(2) 負担と給付の関係:
   完全な片働き世帯なら共働き世帯と同じ。単身との差は第3号制度ではなく所得再分配の影響
  3|第3号被保険者を廃止した場合の影響:
   現行制度の公平さが崩れ、完全な片働き世帯に対する逆進的なペナルティに
  4|不公平感に関する整理:
   厚生年金の適用拡大や第3号被保険者の縮小は必要だが、第3号の廃止では新たな不公平が
   発生

保険研究部   主席研究員・年金総合リサーチセンター 公的年金調査部長 兼任

中嶋 邦夫(なかしま くにお)

研究領域:年金

研究・専門分野
公的年金財政、年金制度全般、家計貯蓄行動

経歴

【職歴】
 1995年 日本生命保険相互会社入社
 2001年 日本経済研究センター(委託研究生)
 2002年 ニッセイ基礎研究所(現在に至る)
(2007年 東洋大学大学院経済学研究科博士後期課程修了)

【社外委員等】
 ・厚生労働省 年金局 年金調査員 (2010~2011年度)
 ・参議院 厚生労働委員会調査室 客員調査員 (2011~2012年度)
 ・厚生労働省 ねんきん定期便・ねんきんネット・年金通帳等に関する検討会 委員 (2011年度)
 ・生命保険経営学会 編集委員 (2014年~)
 ・国家公務員共済組合連合会 資産運用委員会 委員 (2023年度~)

【加入団体等】
 ・生活経済学会、日本財政学会、ほか
 ・博士(経済学)

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