コラム

年末ジャンボ くじ購入の配分法-2つの宝くじからどのようにポートフォリオを組成する?

2024年11月26日

(篠原 拓也) 保険計理

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◇ それでは、どのようなポートフォリオが効率的か?

つぎに、このグラフで曲線に原点から接線を引いてみる。青い線がそれにあたる。この青い線は「資本市場線」といわれるもので、安全資産が存在するときの「効率的フロンティア」とされる。

そのココロについて、簡単に見ておこう。まず、原点は、リスクもリターンもゼロ。つまり宝くじを買わない場合に相当する。この原点から曲線の方向に向けて進む ―― つまり、宝くじを買ってリスクとリターンをとる方向に踏み出すわけだ。

ここで、原点から曲線に向けて接線を引くことは、「曲線上の点のうち、できるだけ左上のほうを目指すとしたらどこがそれに該当するか」を考えていることになる。

青色の点は接点で、「接点ポートフォリオ」といわれる。(この後に出てくる安全資産への投資を考えずに) 年末ジャンボと年末ジャンボミニだけでポートフォリオを組んだ場合に、リスクとリターンのバランスが最も効率的なポートフォリオとなる。

ざっくり計算したところ、この点はr=0.48に相当していた。これは、年末ジャンボと年末ジャンボミニを48%と52%の配分割合で買えば、リスクに対するリターンの比率が最も高くなる ―― すなわち、最も効率のよいポートフォリオ(=「効率的なポートフォリオ」)になる、ということを意味している。

この接点ポートフォリオの場合、リターンは5億600万円となる。

◇ 安全資産を加味したうえでの効率的なポートフォリオとは?

ただし、効率的なポートフォリオは、接点ポートフォリオだけに限られない。

青い線は安全資産が存在するときの効率的フロンティアであり、この青線上でポートフォリオを組成すれば、いずれも効率的なポートフォリオとなる。

ここで、安全資産とは、その名前のとおりリスクのない安全な資産のことだ。本稿の場合は、安全資産とは、宝くじを買わずに残しておくお金を指すものと考えられる。

そこで例えば、10万円のお金を持っていた場合、6万円をくじの購入にあてることにして、2万8800円分の年末ジャンボ(くじ96枚)、3万1200円分の年末ジャンボミニ(くじ104枚)を買う(48%と52%の割合)。そして残り4万円はくじを買わずに残しておく、といったことが考えられる。このお金の配分法に相当するポートフォリオは、図では、緑色の点となる。

緑色の点は、青線上にあるが、オレンジ色の曲線からは左上側に離れている。これは、曲線上で同じリスクのポートフォリオを組む場合と比べると、より高いリターンが得られることを意味している。

このように、宝くじを買わずにお金を残しておくこと(原点)と、接点ポートフォリオ(青色の点)の間で、効率的なポートフォリオを作ることができるわけだ。

くじを総額でいくら買うか、いくら残しておくかということは、「どれだけリスクをとるか」ということなので、買う人のリスク選好しだいとなる。

◇ 年末ジャンボ 今年はどう楽しむ?

以上、現代ポートフォリオ理論に類似した考え方を用いて、2つの宝くじからなるポートフォリオを組成してみた。

リターンやリスクの設定については、本稿で用いたものは1つの例に過ぎない。本稿とは違う考え方もいろいろありうるだろう。さまざまな考え方に従って、ポートフォリオを考えてみるのも面白いかもしれない。

そもそも宝くじの買い方は人それぞれだ。これが正解といえるものはない。いろいろ考えてくじを買うところから、すでに宝くじの楽しさは始まっているといえる。

今年の宝くじの発売期間は12月21日(土)までで、検討のための時間はまだたっぷりある。

そして、くじを買ったあとは、抽せん日(大晦日)まで、ドキドキ感やワクワク感を存分に味わう。そうすることで、慌ただしい年の瀬を楽しく過ごすことができれば、すでに宝くじの効用を十分に引き出すことができたといえるだろう。

(本稿をまとめるにあたり、参照した資料等)
 
「宝くじ公式サイト」(全国都道府県及び全指定都市)
 https://www.takarakuji-official.jp/
 
「証券投資論 [第3版]」(日本証券アナリスト協会編, 榊原茂樹・青山護・浅野幸弘著, 日本経済新聞社, 1998年)
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