EUのAI規則(1/4)-総論、定義、禁止されるAIの行為

2024年10月16日

(松澤 登) 保険会社経営

■要旨

2024年6月13日にEUのAI規則(以下、本規則)がEUジャーナル(日本の官報に相当)に掲載され、同年8月1日に発効した。今回より4回のシリーズで本規則を解説することとしたい。なお、本規則はAI規則にあたって、人の権利・安全の確保と、イノベーション支援を2大目標にしている。

1回目となる本稿は本規則の適用範囲、定義、禁止されるAIの行為について述べる。
 
適用範囲であるが、主にはEU域内へAIシステムを市場投入あるいはサービスを行う提供者と、EU域内でAIシステムを業務上利用する配備者である。これらの事業者、特に高リスクAIシステムを投入・利用する者には一定の義務が課されるが、それは2回目のレポートで述べる。
 
定義で重要なのは、AIシステムそのものである。本規則では詳細に定義されている。これを要約すると、入力に対して、推論を行い、出力する機械のシステムであり、人の脳と同じ働きをするものを指している。
 
禁止されるAIの行為は人の意識や感情に勧奨するシステムや、人を監視し、分類するシステムなどが挙げられている。これらは行為そのものの権利侵害リスクが高く、AIシステムの機能として社会として許容されないものであることが理由とされる。

■目次

1――はじめに
2――総論
  1|本規則の適用範囲
  2|若干の定義
  3|本規則から除外されるもの
  4|リテラシー
3――禁止されるAIの行為
  1|禁止される行為
  2|リアルタイム遠隔生体識別システムが許容されるケース
4――小括

保険研究部   取締役 研究理事 兼 ヘルスケアリサーチセンター長

松澤 登(まつざわ のぼる)

研究領域:保険

研究・専門分野
保険業法・保険法|企業法務

経歴

【職歴】
 1985年 日本生命保険相互会社入社
 2014年 ニッセイ基礎研究所 内部監査室長兼システム部長
 2015年4月 生活研究部部長兼システム部長
 2018年4月 取締役保険研究部研究理事
 2021年4月 常務取締役保険研究部研究理事
 2025年4月より現職

【加入団体等】
 東京大学法学部(学士)、ハーバードロースクール(LLM:修士)
 東京大学経済学部非常勤講師(2022年度・2023年度)
 大阪経済大学非常勤講師(2018年度~2022年度)
 金融審議会専門委員(2004年7月~2008年7月)
 日本保険学会理事、生命保険経営学会常務理事 等

【著書】
 『はじめて学ぶ少額短期保険』
  出版社:保険毎日新聞社
  発行年月:2024年02月

 『Q&Aで読み解く保険業法』
  出版社:保険毎日新聞社
  発行年月:2022年07月

 『はじめて学ぶ生命保険』
  出版社:保険毎日新聞社
  発行年月:2021年05月

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