円相場は乱高下、今後は円高か円安か?~マーケット・カルテ9月号

2024年08月16日

(上野 剛志) 金融市場・外国為替(通貨・相場)

月初149円台半ばでスタートしたドル円は、5日に一時141円台まで円高に振れた。7月末のMPMで鮮明となった日銀の前向きな利上げ姿勢が記憶に新しいなか、雇用統計など弱めの米経済指標が続いたことで米景気後退懸念がにわかに台頭し、先行きにかけての日米金利差縮小が意識されたためだ。投機筋の円売りが大きく巻き戻されて円高に拍車がかかった。一方、その後は内田日銀副総裁によるハト派的な情報発信や堅調な米経済指標を受けた米景気後退懸念の緩和によって円安方向に戻しており、足元では148円台後半で推移している。

当面は落ち着きどころを模索する時間帯となり、やや不安定な値動きが想定されるが、次第に円高基調になっていくと予想している。米国の物価上昇圧力は着実に鈍化していることから、FRBは9月に利下げを開始し、以降継続すると見込まれる。一方、日銀は市場が落ち着くにつれて、再び追加利上げへの意欲を表してくるだろう。両者の結果としての日米金利差の縮小が円高に作用すると見ている。ただし、(1)投機筋の円売りは既に相当解消されたとみられること、(2)FRBの利下げは既に市場でかなり織り込まれていること、(3)貿易赤字やデジタル赤字といった実需の円売りは健在であることから、円高のペースは緩やかになりそうだ。

なお、自民党総裁選に関しては、大方の有力候補は日銀の利上げ路線を容認しているとみられるため、影響は限られると見ている。米大統領選の情勢は拮抗しており予断を許さないが、結果に関わらず、選挙後には不透明感の緩和を口実としたリスク選好地合いの下、円がやや売られる可能性が高い。3か月後の水準は145円弱と見込んでいる。

長期金利は月初1.0%台前半でスタートした後、米景気後退懸念を受けて一旦0.7%台に急低下した。その後は堅調な内外経済指標を受けてやや持ち直し、足元では0.8%台後半にある。

日銀は今月から国債買入れの減額を開始しており、今後も減額を続けていく計画を示している。さらに追加利上げ観測も次第に復していくとみられるため、長期金利は上昇に向かうだろう。一方で、FRBの利下げ開始が金利抑制要因となる。3ヵ月後の水準は1.0%台と予想している(ユーロ円に関する記述は割愛)。
 
(執筆時点:2024/8/16)

経済研究部   主席エコノミスト

上野 剛志(うえの つよし)

研究領域:金融・為替

研究・専門分野
金融・為替、日本経済

経歴

・ 1998年 日本生命保険相互会社入社
・ 2007年 日本経済研究センター派遣
・ 2008年 米シンクタンクThe Conference Board派遣
・ 2009年 ニッセイ基礎研究所

・ 順天堂大学・国際教養学部非常勤講師を兼務(2015~16年度)

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