図表でみる世界の人口ピラミッド

2024年07月30日

(三尾 幸吉郎)

1――日本の人口は減少も世界では増加

日本の人口は減少する見込みだが、世界では増加する見通しである。国連が公表した「World Population Prospects 2024」によれば、世界全体の人口は今後50年間で21.7億人ほど増えて100億人余りとなる見通しだ(図表-1)。

国・地域別にみると、アフリカでは17.6億人も増えて現在の2.2倍になる。さらにインドは2.5億人増、東南アジアは0.7億人増、中南米は0.5億人増と、発展途上にある国・地域の増加が目立つ。また先進国でも移民の多い米国は0.6億人ほど増える見込みだ。他方、中国は4.6億人も減って10億人の大台を下回るほか、欧州も1億人ほど減少し、日本は0.4億人ほど減って1億人の大台を下回り、韓国や台湾も3割を超える大幅な減少が予想されている。

2――世界の人口ピラミッド

2――世界の人口ピラミッド

1日本の人口ピラミッド
それでは、それぞれの人口ピラミッドはどうなっているのだろうか。はじめに日本の人口ピラミッドの歴史的変遷を簡単に振り返っておこう。第二次世界大戦後の日本は、ベビーブームが起きたこともあって子供が多く高齢者の少ない「富士山型」の人口ピラミッドだった(図表-2)。当時(1950年代)の合計特殊出生率は2.57と人口増減の分岐点とされる人口置換水準(約2.07)を大幅に上回っていた。その後の合計特殊出生率はやや下がり人口置換水準で推移したため、ベビーブーマーが大人となった1975年には「つりがね型」の人口ピラミッドへと変化した。しかし1980年代に入ると、ライフスタイルの変化などを背景に合計特殊出生率はじわじわと下がり、2023年には1.208まで低下、現在の人口ピラミッドは「つぼ型」となっている。そしてこのような少子高齢化を織り込んでいなかった日本の社会保障制度は、その持続可能性に疑問符が付くようになり、その持続可能性を高めるための構造改革が急務となっている。
2人口が増加する国・地域の人口ピラミッド
人口の急増が予想されるアフリカは「富士山型」の人口ピラミッドであり(図表-3)、前述した1950年頃の日本と似た年齢構成だ(図表-2)。子供が多く将来の生産活動を担う現役世代が増えるという点では明るい希望が持てる状況ではあるが、政府がその子供を養う現役世代に十分な就業機会を提供することができなければ、児童労働などの人権問題を招いたり、言葉・習慣の違いや人種差別を覚悟した上で、国外に就業機会を求めて流出(移民)したりしてしまう。また人口が増えると、学校や病院などの社会インフラが不足しがちで、それを充足するには大規模な資金投入が必要となる。さらにエネルギー需要も増えるため、地球環境への負荷拡大という問題も生じてくる。

また緩やかな人口増加が続く東南アジア、インド、中南米は「つりがね型」の人口ピラミッドであり(図表-3、図表-4)、前述した1975年の日本と似た年齢構成だ(図表-2)。先進国に比べて所得水準が低いことから、さらなる経済発展で高質な就業機会を増やすとともに、若年層が増えなくなり高齢層が増えてくるので、それに応じた社会インフラの拡充・質的改善が必要となってくる段階である。
他方、豊かな国としては珍しく人口が増える米国は、「つりがね型」に近い「つぼ型」の人口ピラミッドである(図表-5)。その背景には米国の合計特殊出生率が1.624(2023年)と日本より高いことがある。但し、後述するフランスのように少子化対策が奏功したという見方は少ない。米国は移民が多く、外国生まれの人口が13.7%(2022年)を占めており、中でもヒスパニック系の出生率が高いことが貢献したものと見られている。
3人口が減少する国・地域の人口ピラミッド
豊かな国の多い欧州は、日本と同じ「つぼ型」の人口ピラミッドであり、日本と比べると高齢層の比率はやや少なく、若年層はやや多い(図表-6)。但し、欧州はさまざまで、イタリアが日本に近い「つぼ型」なのに対して、フランスは「つりがね型」に近い「つぼ型」である(図表-7)。その背景には少子化対策の成否がある。イタリアの合計特殊出生率は1.198(2023年)と日本と同水準だが、フランスは1.639(2023年)と日本よりも高い。フランスは少子化対策に成功した国の代表格とされている。
また日本と同じくらい豊かな韓国と台湾も、日本と同じ「つぼ型」の人口ピラミッドであり、日本と比べると、少子化の度合いは同水準だが、高齢化の度合いは日本より低い(図表-8)。そして韓国も台湾も少子化対策を積極化してはいるものの、韓国の合計特殊出生率は0.720(2023年)、台湾は0.870(2023年)と日本のそれを下回っており、目立った改善は確認できていない。

他方、発展途上国としては珍しく人口が減少する中国は、欧州や日韓台のような豊かさに到達していないにもかかわらず、「つりがね型」に近い「つぼ型」の人口ピラミッドである(図表-9)。日本と比べると若年層の比率は多く高齢層は少ない。また米国と比べると少子化・高齢化ともに大きな違いはない。しかも、足元(2023年)の合計特殊出生率は0.999と日本を下回るところまで低下してきた。その背景には、出産適齢期の女性人口が少ないことや新型コロナウイルス感染症による出産控えなど周期的・一時的な要因もあるため改善する余地はある。但し、結婚・出産年齢の上昇や子育てに対する意欲の低下などライフスタイルの変化もあるため、大幅な改善は期待できないだろう。

3――おわりに

3――おわりに

このように世界の人口ピラミッドを俯瞰してみると、豊かになった国・地域のほとんどは「つぼ型」の年齢構成であるため、少子化・高齢化対策が社会・経済の主要課題となっている。一方、発展途上にある国・地域のほとんどは「富士山型」や「つりがね型」の年齢構成であるため、さらなる経済発展によって高質な就業機会を増やし、社会インフラの拡充・質的改善を図っていくことが社会・経済の主要課題となっている。

日本としては、社会・経済の主要課題が共通する国・地域とは、少子化・高齢化対策に関する情報交換が双方に有益なヒントをもたらすだろう。他方、経済発展や社会インフラの拡充・質的改善が主要課題となっている国・地域には、日本が経験した成功例や失敗例を伝えることが、その国・地域の政府関係者には有益な情報となるだろう。また人口増加に伴う地球環境負荷の拡大という問題に対しては、日本が技術支援などを通じて貢献することができるし、それは先進国としての責務でもある。
 
 

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