1|Appleの反競争的行為22
(1) 上述、2~6で述べたようなことを行ったのは、Appleの自社製品の改善のためではなく、他社製品の劣化のための行為である。競争の減少という恩恵を受けて、Appleは莫大な利益を引出し、自社のためにイノベーションを規制する。その結果、すべてのスマートフォン利用者の選択肢が減少し、価格や料金が上昇し、スマートフォンその他の質が劣化し、技術革新が停滞する。Appleの行為が続けばスマートフォンの独占を維持、強化し、他から脅威を与えられなくするだろう。
(2) Appleの行為はスマートフォン利用者の選択肢を減少させ、有意な競争者としてはGoogleとサムソンしか残っていない。
(3) AppleはiPhoneから他のスマートフォンへ機種変更する場合のコストを増大させ、競争を減少させ、Appleの独占力を強化している。これはクロスプラットフォームを可能とするスーパーアプリへの圧迫やクラウドストリーミングアプリなどに対する上記で述べた各種阻害行為に起因して問題を生じさせている。これらAppleの行為がなければ、Appleに競争圧力をかけ、サードパーティおよび利用者の手数料の減少や品質の向上をもたらしたであろう。
(4) Appleの行為は上記以外でも利用者に損害をもたらしている。たとえばデジタルウォレットをApple Pay限定にしたことにより銀行に手数料を発生させ、価格の上昇や品質の低下を招いている。また、代替のデジタルウォレットはよい特典を提供したり、よりプライベートで安心な決済体験を提供したりできる。しかし、現在、代替するタップ・トゥ・ゴーはAppleには存在しない。
(5) Appleの行為はまたApple自身の品質の低下を招いている。サードパーティがスーパーアプリやクラウドベースのゲームアプリを市場投入するため多額の投資を行ったにもかかわらず、開発計画を断念しなければならなかった。そのほか、教育、人工知能など革新的な高付加アプリの開発を遅らせた可能性もある。
(6) Appleの行為は他のスマートフォン利用者にも損害を与えている。たとえば米国企業はデジタルウォレット開発を断念し、また別の企業は革新的な車のデジタルキーについて、そのほかの機能もすべてApple Wallet搭載を求められたためサービス提供を断念した。
(7) Appleの行動は関連市場で独占力を構築・維持するという反競争的目的で動機づけられている。このため、スーパーアプリ、ミニアプリ、クラウドストリーミングアプリその他のアプリから得られたはずの多額の収益を犠牲にした。これらの収益や品質向上よりもスマートフォンの競争が減少することによる長期的な利益を優先した。
(8)Appleによるスマートフォンの競争による損害はAppleがアプリ配布をApp Storeを独占的なチャネルとする決定によって増幅された。もしAppleが他の方法を認めていればサードパーティはiOS専用ではなく、あらゆるスマートフォン向けにプログラムを書くことができ、利用者の乗り換えコストは減少し、サードパーティのAppleの依存度も減少するだろう。
(9)Appleのスマートフォン独占は反競争的行為によって確保されたものである。Appleの定めたルールを変更せざるを得なくなった場合であっても、他の方法で競争阻害するようなルール、制限、機能を採用する能力を有する。たとえばAppleで問題視されたアンチステアリング条項(音楽などの購入をアプリ外での購入に誘導することなどの禁止)についても、Appleは別の手段で厳格な制限を設けている。
22 前掲注1 p49~p54参照