さて、保険・年金分野をみても、当然こうした規制の影響を受ける。欧州では、すでにEIOPAが、グリーンウォッシングをどう規制するかについて欧州委員会から諮問を受けており、2023年11月に市中協議に入り、広く意見を求めている段階にあって、2024年5月に最終報告書が公表される予定となっている。
規制の考え方として、以下の4つの原則が挙げられている。すなわち、サステナビリティに関する商品供給者サイドの主張は
1.正確であり、かつ全体のビジネスモデルや商品と整合的であること
2.明確な根拠をもとにタイムリーに変更されるべきであり、常に最新状態にアップデートされていること
3.明確な理由があって、事実に基づいて実証できるものであること
4.その裏付けとともに、利害関係者が理解しやすいものであること
これに対し、3月に公表されたのが、今回紹介する欧州保険協会が公表した意見書である。内容はおおむね以下のようなものである。
〇規制の制定自体については賛同するが、EU全体のサステナビリティ関連法制を考慮し全体に一貫性があるようにすることが重要である。
〇上記の、欧州理事会でグリーンウォッシングの規制が採択される前から、EIOPA草案が示されていることから、その前後関係が心配であり、最終的には全体の整合性のある規則となることを要望する。
〇保険ベース投資商品(IBIPs)が保険と投資の両方の要素を兼ね備えていることを考慮すると、特に商品の命名に関して、保険サイドだけでなく、証券サイド(欧州証券市場監督機構:ESMA)との調整が必要である。
〇保険販売指令の保険商品・監視ガバナンスや適合性評価が既にあるが、EIOPAは監督原則のみ提示し、各国の監督当局が状況に応じて対応すべきである。
〇「誤解を招く表現」というのは、それぞれの保険・年金商品のセールスポイントや競争上の優位性を得る目的の部分のみチェックの対象とすべきで、一般の訴求(経営方針などのことか?)にまでは対象とすべきではない。
(筆者注:といってもグリーンウォッシングの大もとの規制がそうなっているのだから、どうしようもないと思われるが?)
〇一般に保険会社は、消費者に馴染みのない専門用語を用いて法的な正確性を保持できている部分がある。そこを消費者に分かりやすくするために、あえて一般用語を用いたあいまいな表現をしたりする場合もある。正確であることと、利害関係者の受入れやすさ両方を満たすように、こうしたことはどの程度認められるのかといった線引きを、ガイドラインなどとして定めておく必要があるのではないか。
3――おわりに