過去最高の新契約保険料収入となった米国個人生命保険販売-2024年、2025年も5%成長予想-

2024年03月26日

(有村 寛) 保険商品

1――米国個人生命保険2023年の新契約販売業績の概況

米国における生保・年金のマーケティングに関する代表的な調査・教育機関であるLIMRAが発表したところ1によれば、2023年の個人生命保険販売(新契約年換算保険料ベース)は、対前年1%増となり、3年連続で過去最高を更新することとなった。

(図表1)は、新契約年換算保険料(=販売された新契約の保険料を、一時払保険料は10分の1して年換算した数値2)、新契約高(=販売された新契約の死亡保険金額の合計額)、新契約件数(=販売された契約の件数)、という3つの指標で見た個人生命保険販売業績である3
(図表2)は、2022年以降の新契約販売実績について、四半期毎に見たものである。
2021年に記録的な伸びとなった米国個人生命保険販売は、2022年後半に一旦減速傾向を示したものの、2023年に入るとり再び増加基調に転じている。LIMRAでは、「パンデミックにより、保険会社はデジタル化の取り組みを加速させ、生命保険の購入プロセスを変革し、顧客体験を向上させた。この投資は、好調な経済と高い消費者の関心と相まって、2023年の売上高の伸びに確実に貢献している。」としている4
 
1 LIMRA ニュースリリース「U.S. Life Insurance Premium Sets New Record in 2023」(2024年3月14日)、「U.S. Retail Individual Life Insurance Sales Survey - Summary Report」(4Q 2023)。
2 LIMRA資料ではAnnualized Premiumと表記されている。
3 なお、LIMRAによれば、上記データの米国生保市場のカバー率は、新契約年換算保険料で85%、新契約高で90%、新契約件数で60%である。
4 前掲注釈1記載のLIMRA ニュースリリース(2024年3月14日)。

2――LIMRA、2024-2025年はそれぞれ5%成長と予想

2――LIMRA、2024-2025年はそれぞれ5%成長と予想

また、LIMRAでは、2023年の業績と併せて、2024-2025年の個人生命保険販売(新契約年換算保険料)について、商品別に予想を公表している。それによれば、経済状況を背景に全商品合計では、2024年、2025年ともに5%成長を予想している。
LIMRAでは、2023年12月13日付でも、予想を公表しており、今回の予想は、12月13日付の予測と個人保険合計の数値は同じとなっているが、定期保険(12月13日付予想では2024年、2025年ともに3%)、ユニバーサル保険(同2024年▲12%以上、2025年▲8%)、インデックス連動ユニバーサル保険の数値(2024年、2025年ともに4%5)で若干、修正・変更されている。

これまで何度か紹介してきた6とおり、「今後1年で生命保険への加入意向を持つ人」の割合は過去最高水準に達しているとの調査結果もある7中では、「ニーズは十分に取り込めていない」との見方もある8が、「ニーズが業績を支えている」とも考えられる。

一方、2024-2025年の業績について、インフレ圧力等を背景にそれぞれ2.5%、2.1%の増加(収入保険料ベース)に留まるとの見方9や、大統領選挙の行方等、先行きが見とおし辛い部分もあり、今後の米国経済、また、米国個人生命保険販売はどうなっていくのか、注目されるところである。状況については引き続き、注視して参りたい。
 
5 「図表3」の各数値は、前掲注釈1記載のLIMRA ニュースリリース(2024年3月14日)に記載されているが、同ニュースリリースではインデックス連動ユニバーサル保険について2025年の数値の記述がないため、ここでは「-」と記載している。
6 小著「堅調を維持している2023年上期米国個人生命保険販売」『保険・年金フォーカス』(2023年11月28日)(https://www.nli-research.co.jp/report/detail/id=76836?site=nli)、「2024-2025年も成長が見込まれる米国個人生命保険販売」『保険・年金フォーカス』(2024年1月16日)(https://www.nli-research.co.jp/report/detail/id=77256?site=nli)。
7 LIMRAニュースリリース「New Study Shows Interest in Life Insurance at All-Time High in 2023」(2023年4月24日)によれば、「今後1年で生命保険への加入の意向を持っている人は、過去最高の39%に達した、中でもZ世代(1997-2012年生まれ)とミレニアル世代(1981-1996年生まれ)は、それぞれ44%、50%とさらに高い」、とされている。
8 LIMRAニュースリリース「Three Misconceptions May Deter Americans from Getting the Life Insurance They Need」(2023年9月5日)。なお、当ニュースリリースでは、「保険加入の意図」を「保険加入へのアクション」に変えるためには「保険に対する誤解を解く」ことが必要、とされている。
9 Fitch Solutions Group Limited, BMI United States Insurance Reports(2024年1月29日)。なお、同(2023年10月25日付)では、2024-2025年の業績について、1.8%、2.4%としており、2024年については、より前向きな予想に修正されている。

保険研究部   上席研究員 兼 気候変動リサーチセンター 気候変動調査部長

有村 寛(ありむら ひろし)

研究領域:保険

研究・専門分野
保険商品・制度

経歴

【職歴】
1989年 日本生命入社
1990年 ニッセイ基礎研究所 総合研究部
1995年以降、日本生命にて商品開発部、法人営業企画部(商品開発担当)、米国日本生命(出向)、企業保険数理室、ジャパン・アフィニティ・マーケティング(出向)、企業年金G等を経て、2021年 ニッセイ基礎研究所へ、2023年7月より現職

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