( 日本企業 )
日本企業を対象とするサーベイでは、本社企業を対象とする場合、中国市場への期待の低下、投資分散化の意向などが確認される傾向がある。海外現地法人を有する製造業企業を対象とする国際協力銀行(JBIC)のアンケート調査
23では、中国は「中期的な有望事業展開先国」で第3位となり、2年連続で順位が低下した。インドが他を引き離して第1位となっており、ベトナムが第2位に浮上している。「海外事業を強化する」と回答した割合は67.7%と「国内事業を強化する」の46.7%を大きく上回る。オンショアリング、リショアリングの動きが強まっているとは言えないが、国内事業強化の割合は2011~14年には30%を割り込む水準から回復基調にある。
海外ビジネスに関心が高い企業を非製造業も含めて対象としている日本貿易振興機構(ジェトロ)のアンケート調査
24では、「今後の事業拡大先」の第1位が米国、第2位がベトナムで、中国は第3位となっている。中国向けに輸出、投資、業務・技術提携を行っている企業は5割以上が中国ビジネスを拡充する方針を示しているのに対し、既存のビジネスがない企業の6割はビジネス展開を行わない意向を示し、温度差が観察される。全体として中国ビジネスへの意欲は過去10年で最低の水準となっている。「拡充・維持」する理由としては市場規模や成長性などを理由とする「ビジネス拡大への期待(58.4%)」、「事業が軌道に乗っている(34.5%)」が上がっている。「事業が軌道に乗っている」との回答は大企業では47.9%を占めており、企業規模による差が観察される。
ジェトロのアンケートによれば、中国からの縮小や撤退の意向を示す企業はごく少数である。既存ビジネスの拡充や新規ビジネスを検討するなど中国ビジネスに対する意欲は過去10年で最低となったが、「まだ分からない」との回答も3割を超える状況にあり、「縮小して他国に移管」は7.5%、「撤退して他国で展開」は1.3%に留まっている。「縮小・撤退」の理由としては、「地政学的リスクの高まり」が56.0%で最多であり、「コスト面での優位性の低下」が42% 「中国側の規制」が31.9%で続く。
在中国企業を対象とするサーベイからは、中国ビジネスの厳しい現状と投資への慎重姿勢がうかがわれる。中国日本商会が今年1月に公表したサーベイ調査
25では、2024年の景況予測は「悪化」と「やや悪化」が合わせて39%で、「改善」と「やや改善」の25%を上回る(「横ばい」が37%)など景況認識は厳しく、投資の増加を見込む割合は合計15%である(図表25)。米国企業に比べて、景況予測はより厳しく、投資への姿勢も慎重と言えそうである。事業経営の課題としては」、3カ月前に実施された初回のサーベイから、「国際情勢の影響」の割合が低下(62%→42%)する一方、人件費の上昇(65%→65%)、販売価格の下落(55%→51%)という中国の経済情勢に関わる課題が高止まる傾向が見られる。
23 国際協力銀行の「わが国製造業企業の海外事業展開の動向に関するアンケート調査(第35回)」2023年7月11日~ 9月1日実施。調査企業数937社に対して回答数は534社。原則として海外現地法人を3社以上(うち、生産拠点1社以上を含む)有する企業が対象
24 日本貿易振興機構(ジェトロ)の「日本企業の海外事業展開に関するアンケート調査(速報版)」2024年2月14日、2023年11月14日~2023年12月18日実施、海外ビジネスに関心が高い日本企業が9384社が対象、3196社が回答(製造業1834社、非製造業721社、企業規模別には大企業が484社、中小企業が2712社)
25 中国日本商会「会員企業景気・事業環境認識アンケート結果 第2回」2024年1月15日、2023年11月23日~2023年12月13日実施。対象企業約8000社、有効回答数は1713件
5――おわりに