① 価格が3,000万円未満
このグループでは全体的に成約率が20%を切る期が多い。直感的には首都圏の物件としては格安の部類に入り、駅距離、築年、地域性など、リフォームでは改善できない何かの要因で競争力が劣る物件が多いと考える。また、5年平均・3年平均・1年平均の水準も低い。売り主はリフォーム代を最低限にし、買い主は希望条件を大きく妥協するなど、割り切りが必要な価格帯と考える。
② 価格が3,000万以上5,000万円未満
売れ行きが①よりもよく、全価格帯の推移で最も成約率の高い2021年第1四半期の山も高い。ただし直近の売れ行きを見ると、②の内訳として、3,000万以上4000万円未満は①3,000万円以下の動きに近く、4,000万未満5,000 万円以下は③5,000万円以上の動きに近い。中古マンションの価格上昇を受け、10年前であれば4,000万円であったマンションが現在5,000万以上で販売されるなど、各価格帯が含むマンションのグレードが変わってきていることが要因と考える。
5年平均・3年平均・1年平均価格帯が上がるほど成約率も上がっているのは、グレードが高く、立地も良く、競争力が上がるためだろう。そして、1年平均は3年平均と5年平均いずれの水準より低い。この価格帯を購入するのは実需層であり、希望するグレードに対して割高と感じられるマンションが増加しているためであろう。
③ 価格が5,000万以上1億円未満
5,000万以上1億円未満の相関係数は0.89と高い。しかし、グラフの形状からそれぞれの価格帯の特徴はやや異なると考える。
③の内訳として、5,000万以上7,000 万円未満は2021年第1四半期には成約率49.8%、直近の2023年第4四半期の成約率は29.0%となるなど最も売れ行きが良い時期が多い価格帯である。10年前は7,000万円から8,000万円程度が実需層の上限と言われており、グラフの形状も②グループと近い。実需層の売れ行きを取り込みやすく、流動性も高く、この価格帯の水準を維持できているなら資産価値も維持しやすいだろう。
7,000万以上1億円未満は2021年第1四半期には成約率43.8%、2023年第4四半期の成約率は36.8%と過去の推移では2番目に、最近では最も売れ行きが良い価格帯である。グラフの形状自体は1億円以上に近く、直近では同価格帯との類似性が高まっている。新築マンションであったときも高グレードに属する物件であったと考えられ、競争力も高く、資産価値維持やインフレ・ヘッジも十分に期待できる。また1年平均が5年平均よりも高い。特に1億円弱の価格水準では住宅ローン借入額に加えて余裕資金も必要になり、投資目的や贅沢品としてのマンションとして購入する層が混在し、これらの層が需要を引き上げたと考える。
④ 価格が1億円以上
グラフの形状が③の内訳である7,000万以上1億円未満と類似しており、相関係数も0.90と高い。しかし、成約率は10%前半から20%半ばである期が多く、価格帯が実需層の需要価格帯と乖離していることから流動性は劣る。売却には時間を要するとともに、同時期に販売される同価格帯のマンションの多さや経済情勢によって資産価値が騰落する可能性には注意が必要だろう。
また、1年平均は5年平均よりも高く、3年平均の水準に近い。この価格帯では住宅ローン以外の余裕資金が必ず必要になり、投資目的や贅沢品としてのマンションとの意味合いはさらに強くなるため他とは違うグラフ形状となったのだろう。つまり、資産価値維持やインフレ・ヘッジが最も期待できる価格帯と考える。