具体的な方策はいまだ検討中のようだが、基本的な考え方について今回提案には以下のような項目が含まれている。
(事前に準備すべきこと)
対象となる保険会社は、平常時の企業活動のひとつとして、ソルベント・イグジットの計画を準備しておく必要があり、計画は文書化しておかなければならない、といった規則を設けること
ソルベント・イグジットが他の方策に比べて合理的であるという状況は、何らかの基準に基づき判断して、そうした時のみ適用されるべきこと、PRAサイドでも実行計画を準備し、平時から状況を監視し管理してくこと
(破綻ではなく、支払い能力のあるうちに処理するということ)
この協議文書における提案は、保険会社がソルベント・イグジットを順調に実行できる可能性を高めることを目的としている。支払不能に陥ってから破綻処理するよりも、効率的で費用対効果が高く、保険契約者への影響も小さく済むとPRAが考えていることによる。そのためには、ソルベント・イグジットに向けた準備方法をあらかじめ明確にしておいた方が、よい良い整合的な結果をもたらすと考えられる。
(意図・目的)
ソルベント・イグジットを制度として確立し、それに対して保険会社が準備を強化しておくことは、PRAの目的(=健全性の維持)に合致し、保険業界と、さらに広く市場全体に利益をもたらすだろう。またソルベント・イグジットがうまくいけば、支払能力を失った後で行う破綻処理よりも、金額的な面で保険契約者保護が最大化されるだろう。存続が困難な保険会社は、比較的容易に撤退できるようにすることで、PRAの介入の可能性・必要性を減じることができる。
ただし、その手続きや手順、行きつく先が不透明なままでは、市場全体のリスクをかえって高めることにもなる。当初ソルベント・イグジットの予定が結局は破綻処理となってしまい、関連コストの増大や保険契約者、債権者その他の利害関係者へのリスクを高めることにならないよう、制度を構築しておく必要がある。
(障害となる点の、事前の洗い出し)
現時点では、生命保険会社・損害保険会社とも、何がソルベント・イグジットの障壁になるかについて経験が乏しいため、やってみないとわからないという面が強い。今回の協議の目的は、事前にそうした障害となる点を分析することでもある。ソルベント・イグジットに対する障壁は、例えば保険会社の性質、事業内容、市場に占める位置などに応じて、複雑で多面的なものになることが想定される。分析を踏まえて、存続可能性、事業譲渡の可能性、売却の可能性などの制度の改善または調整に必要な項目の特定に役立つことも期待できる。
こうした検討を通じて、PRAが「実際に制度が実行可能である」という確信を強く持つことができれば、処理実行中にPRAがいちいち関与する必要が少なくて済む。
(他業態の同様な処置との整合性)
この提案は、先に行われた、非システミックな銀行や住宅金融組合向けの提案と、できるだけ整合性を保つようにしている。しかし、当然のことながら、事業内容の違いや規制の違いにより異なるアプローチをとる面もある。保険会社の場合、特に負債は長期にわたり、簡単に譲渡・交換などができないという面が、預金と比べて処理に求められる要求事項や影響が異なると考えられる。
また、銀行や住宅金融組合の場合は、破綻の際の手続きがある程度存在していたものを拡張できたのだが、保険会社の場合既存のものはなく、あらたに構築する必要がある。
2――対象範囲