1|年金自動加入制度
生保会社に年金の好業績をもたらしている第1の要因は、職域年金(ワークプレイスペンション)における自動加入制度である。
自動加入制度は、全ての企業に対して、一定の加入資格を有する従業員を、英国政府が承認した職城年金制度に加入させること、および一定の掛金を拠出すること、を義務付けるものである。2012年から順次適用され始め、2018年以降は、全ての企業が適用対象となった。
英国政府が承認した職城年金制度とは、下記の(1)または(2)を言う。
(1) 保険会社等が提供する、確定拠出企業年金制度、確定給付企業年金制度、団体個人年金、団体ステークホルダー年金、団体自己投資型個人年金(SIPP)で、適格要件を満たす職城年金制度
(2) 非営利の公共法人であるNESTコーポレーションが受託・運営する確定拠出年金制度であるNEST(国民雇用貯蓄信託)
なお、(1)中の団体個人年金、団体ステークホルダー年金、団体自己投資型個人年金(SIPP)は、契約形態が団体扱いの個人年金で、加入者が運用方法を選び、その成果が将来の給付に反映される確定拠出型の個人年金である。契約は、個人と年金提供者(通常は保険会社)との間で締結される。
団体ステークホルダー年金は投資経験が少ない中低所得者でも貯蓄が可能なように設計された個人年金、団体自己投資型個人年金(SIPP)は投資経験が豊富な人向けの自己投資型の個人年金である。
また(2)のNEST は、従業員を自動加入させる職域年金制度を用意することが難しい企業に勤務する従業員が自動加入する最終的な受け皿として、適切な低料金の年金制度を提供することを目的に発足したものである。NESTコーポレーションが制度を運営し、運営管理や資産管理は外部企業に委託されている。
なお、要件を満たす従業員は、企業から提供される適格な職域年金制度に自動加入することになるが、自動加入後1か月以内に申し出て、職域年金制度から脱退(オプトアウト)することもできる。
自動加入制度は、数十年にわたり低下傾向にあった英国における職域年金の加入率を持ち直させた。制度が始まる直前2011年の英国の職域年金加入率は47.6%であったが、2021年の職域年金加入率は79.4%まで上昇している(グラフ3)。