(参考)超過相対比率アプローチによる計算
超過相対比率アプローチ計算のための手順は、以下の通りとなっている。
ステップ1:管轄区域の資本要件を理解し、最初の介入レベルを特定する。
ステップ2:集約された業界財務データを取得する。
ステップ3:管轄区域の業界平均自己資本比率を計算する。
ステップ4:管轄区域の超過自己資本比率を計算する。
ステップ5:スカラーを開発するため、管轄区域の超過自己資本比率と米国の超過自己資本比率を比較する。
ステップ6:GCCにおける米国以外の保険会社の金額に対してスカラーを適用する。
なお、各管轄区域における会計と資本要件に組み込まれた保守性のレベルは、生命保険会社と損害保険会社では大きく異なる可能性があり、スカラーはビジネスの種類に応じて決定される。
具体的な計算例は、米国とA国との比較を行う場合、以下の通りとなる(生命保険会社の例)。
ステップ1
米国のRBCについては、100%会社行動段階(Company Action Level)(=100% CAL RBC)(これは200%権限管理段階(Authorized Control Level)(=200% CAL RBC)に等しい)が基準となる。
A国において、米国の100% CAL RBC に相当する介入水準が、A国における自己資本比率の150%に該当する、とする。
ステップ2
業界全体の財務データは、以下の通りとする。
・米国 合計調整済資本 4,950億ドル 100% CAL RBC 1,020億ドル
・A国 利用可能資本 830億ドル 基準必要資本(BRC) 360億ドル
ステップ3
業界平均自己資本比率は、以下の通りとなる。
・米国 4,950億ドル/1,020億ドル=485%
・A国 830億ドル/360億ドル=231%
ステップ4
超過自己資本比率は、ステップ1で定められた初回介入時自己資本比率を控除して、以下の通りとなる。
・米国 (485%-100%)/100%=385%
・A国 (231%-150%)/150%=54%
ステップ5
A国に対するスカラーを計算するために、A国の超過自己資本比率を米国の超過自己資本比率で割る。
54%/385%=14%
即ち、A国の(生命保険会社に対する)スカラーは、14%となる。
ステップ6
スカラー計算がどのように機能しているのかは、以下の通りとなっている。
・A国のある生命保険会社の報告数値
利用可能資本 1,367,456ドル、基準必要資本(BRC) 341,866ドル
・BRCの初回規制介入レベルへの較正
341,866ドル×150%=512,799ドル
・調整後の最低必要資本
512,799ドル×スカラー14%=71,792ドル
その差は 441,007ドル
・スカラー適用後の利用可能資本
1,367,463ドル-441,007ドル=926,456ドル
・以上の結果として、
スカラー適用前の自己資本比率 1,367,463/341,866= 400%
スカラー適用後の自己資本比率 926,456/ 71,792=1290%
※ なお、この例では、会社のスカラー適用前の自己資本比率(400%)がA国の業界平均(231%)を上回り、スカラー適用後の自己資本比率(1290%)が米国の業界平均(485%)を上回っているが、会社のスカラー適用前の自己資本比率がA国の業界平均よりも低い場合、そのスカラー適用後の自己資本比率は米国の業界平均よりも低くなり、自国の業界平均と等しいスカラー適用前の自己資本比率を持つ会社は、米国の業界平均と等しいスカラー適用後の自己資本比率を持つことになる。
6―AMの実施と最終化