2|保険契約の一方的終了の法的効果(27条)
(1) 26条1項の一方的終了(=保険料不支払いによる解除)は次のように行われる。
a) 保険契約者は保険契約が終了するまでは引き続き保険料を支払わなければならない。ただし、団体保険を除く生命保険と医療保険には適用されない。
―日本でも保険契約が有効中である期間においては、保険契約者は保険料支払い義務を有すると解される。猶予期間中に事故が発生した場合における取り扱いは下記b)c)を参照。
b) 生命保険と医療保険に関して、保険企業等は一方的な保険契約の終了前であり、かつ一方的保険契約終了まで保険料を引き去りできる権利を有するときに発生した保険事故に関して、保険金を支払う責任を有する。
―日本における一般的な月払い生命保険においては、保険料未納の場合、保険料納付月と翌月末を超えると失効扱いになり、契約は有効ではなくなる。ただ、生命保険等においては失効となるまでに発生した保険事故(死亡など)については保険金が支払われる。ただし、支払われるのは未払い保険料が相殺された保険金額となる。したがって、取り扱いは保険事業法と日本の実務で相違がない。
c) 財産保険、損害保険および責任保険契約においては、保険企業等は保険契約の一方的終了の前であり、かつ保険契約で保険料を引き去る権利を有しているときに発生した保険事故については補償する責任を有する。
―たとえば日本における月払い自動車保険においては、保険料未納の場合、保険料納付月と翌月末を超えると失効扱いになり、納付月の月初以降の保険事故について保険金が支払われなくなるという取り扱いとなっている。ただし、この場合でも保険料2か月分を遡って納付することにより、保険金支払いを請求することができる。結論としてこの点についての取り扱いは保険事業法と日本の実務で相違がないと考えられる。
(2) 26条2項の一方的終了(=リスク減少不対応による解除)と3項の一方的終了(=安全対策未実施による解除)を理由とする保険契約の一方的終了については、保険企業等は保険期間の残期間について支払われた保険料相当分を返還しなければならない。保険企業等は保険契約の一方的終了より前に発生した保険事故に対して、損害補てんを行い、保険金を支払わなければならない。
―26条3項は保険法に該当条文がないので2項についてのみ述べる。2項のリスクの著しい危険の減少による保険料削減請求は一般的な請求権であるので、日本では民法の債務不履行による解除の取扱いになる。この場合、保険企業等は解除により原状回復義務を負い、また解除までは保険契約は有効であることから保険事業法と同様の処理が行われるものと考えられる
6。
(3) 生命保険について26条1項、2項により保険契約の一方的終了を行った場合、別途合意している場合を除き、保険企業等は保険契約の解約価額を支払わなければならない。
―日本において保険事業法26条1項に相当する解除では、約款上、解約返戻金を支払うこととされており、保険事業法と同様である。2項については生命保険においては考えにくいので省略する。
(4) 26条4項に基づいて一方的終了を行った場合、保険契約者は各々の保険商品に応じて解約価額または既支払保険料(いずれも残期間に対応したもの)の返還を受けることができる。ただし、保険企業等間で移転される資産の価額が、移転される保険契約の責任準備金を下回る場合には、保険契約者が受領する金額は移転される契約に係る資産価額と責任準備金の比率によって計算される金額となる。
―保険業法では原則として積み立てた金額および、未経過保険料を払い戻すこととされている(137条5項)。ただし、経営悪化に伴う保険契約の移転については、移転にあたって責任準備金の削減や早期解約控除などの条件変更が行われた後の解約返戻金が支払われることとなる(254条)ので、保険事業法よりも複雑な計算に基づいて解約返戻金が算出されることとなる。
6 ただし、残期間返却を月割りベースにするか、日割りベースにするかについては、おそらく前者(月割り)と思われるものの、調べきれなかった。
4――おわりに