1.活動ベースのアプローチの優先順位
2019 年の解釈ガイダンスでは、FSOCは「活動ベースのアプローチ」を優先すると規定している。この「活動ベースのアプローチ」によれば、FSOCがシステム全体ベースで潜在的なリスクの特定を優先し、その後、関連金融規制当局が特定されたリスクに対処できるようにし、これらのリスクに対処するために、企業をノンバンク SIFI として指定するオプションの優先順位が下げられている。
解釈ガイダンス案によれば、FSOCがノンバンク金融会社の指定候補の検討を開始する前に、金融安定性へのリスクに対処するために、まずは連邦および州の規制当局に依存するという記述が削除されており、「活動ベースのアプローチ」を優先する必要がなくなる。FSOCは他の金融規制当局と引き続き連携していくことになるが、ノンバンク SIFI 指定の前に「活動ベースのアプローチ」に従う必要がなくなり、FSOCのノンバンクSIFI指定の優先順位が下げられることはなくなる。
2.費用便益分析
2019年のガイダンスでは、FSOCがノンバンクSIFIの指定を行う前に費用便益分析を実施すると記載されていたが、解釈ガイダンス案はこの要件を削除し、「合理的な特異性を持って指定の潜在的なコストと便益を評価することは指定の前には不可能であり、ノンバンク金融会社の費用便益分析を実行してもバランスの取れた全体像が得られる可能性は低い」と指摘している。
3.財務的苦境の可能性の評価
2019年の解釈ガイダンスでは、FSOCがノンバンクSIFI指定を行う前にノンバンクの経営破綻や破綻の可能性を評価すると述べられているが、解釈ガイダンス案では、この要件が削除されており、「FSOCは会社の重大な財務的苦境の可能性の評価が必要又は適切であるとは信じていない」と述べている。
4.「米国の金融安定性に対する脅威」の解釈
解釈ガイダンス案によれば、2019年ノンバンク指定ガイダンスで定められた「米国の金融安定に対する脅威」の定義について、「この定義は、金融安定性に対する脅威が「あり得る」かどうかをFSOCが判断するように求めているドッド-フランク法第113条に基づく法定基準と大きく対照的である」として、これを削除している。
また、「第113条に基づく分析のために、FSOCは分析フレームワーク案に示された金融安定性の記述を参照して、『米国の金融安定性に対する脅威』を評価することを期待する」と述べられている。
5.SIFI指定手続き等
ノンバンクSIFIを指定するための2段階のプロセスや指定プロセスにおけるFSOCとの関与や透明性を高めるための手続き等については、基本的には2019年の解釈ガイダンスを踏襲している。則ち、(1)FSOC は検討中のノンバンクに通知し、予備分析を実施する。(2)次のステップに移行したことをノンバンクに通知した後、FSOC はさらに詳細な評価を実施する。新たに指定された企業は、ヒアリングを要求することができる。
なお、2012年のノンバンクSIFI指定ガイダンスで導入されていた、FSOCによる追加審査の対象となるノンバンク金融会社を特定するための定量的指標を用いた臨界値段階については、今回の解釈ガイダンス案でも導入されていない。
以上のように、今回の解釈ガイダンス案は、多くの点である意味において2012年の解釈ガイダンスのアプローチに戻った形になっている。なお、解釈ガイダンス案の記述は、FSOCの手続きに限定しており、評議会がとる広範なアプローチについては、新たな分析フレームワーク案に関する文書に記載される形になっている。
7―まとめ