コミュニケーションを行っているときやコミュニケ―ションについて考えるときに不安感情を持つことをMcCroskeyはコミュニケーション不安(Communication Apprehension)という言葉を用いた
4。コミュニケーション不安は常に持っている特性的なものと状況によって変化する限定的なものがあり、主に以下の4つに分類される。
- 特性的コミュニケーション不安
特性的コミュニケーション不安はその人が常に持っているコミュニケーション不安であり、状況等によって変化しないものである。
- 状況コミュニケーション不安
状況コミュニケーション不安はコミュニケーションを行う状況によって変化するコミュニケ―ション不安であり、状況には会議やスピーチ、対話、グループディスカッションなどがある5。
- 人物コミュニケーション不安
人物コミュニケーション不安は特定の聞き手が存在するときに感じる不安感情である。例えば、異性との会話や年上との会話の際に不安を感じることなどが挙げられる。
- 状態コミュニケーション不安
状態コミュニケーション不安は特定の相手や場面でのコミュニケーションにおいて感じる一時的な不安感情である。4つのコミュニケーション不安の分類の中で最も限定的なものであり、その状態から離れると不安感情がな
この4つのコミュニケーション不安を比較すると、特性的コミュニケーション不安が最も広域なコミュニケーションに対する不安感情であり、状況コミュニケーション不安、人物コミュニケーション不安の順に限定的になり、状態コミュニケーション不安が最も限定的に起こる不安感情である。
また、コミュニケーション不安が起こる要因としてLearyは自己呈示理論を用いて説明している
6。自己呈示とは他者に与える印象を自分の求めるようなものにしようとする行動のことを指す。自己呈示理論ではコミュニケーション不安はコミュニケーションによって他者の自分への印象を操作したいという動機があるが、自分のコミュニケーション能力がそれを満たすものではないと感じるときに生じるものとしている。自己呈示理論を記号式で表すと以下のようになる。
CA=f[M×(1-p)]…(1)
ただし、
CA:コミュニケーション不安
M:特定の印象を与えようとする動機づけのレベル
p:個人の望む印象を作れるかどうかの主観的確率 を示す。
コミュニケーション不安を下げるには印象付けの動機レベル(
M)を下げるか、印象づくりの主観的確率(
p)を上げることが必要である。お酒を飲むことで、いつもより話しやすくなることから少なくともどちらかに影響を与えていると考えられる。
4 McCroskey, J. C. Oral Communication Apprehension: A Summary of Recent Theory and Research. Hum Commun Res 4, 78–96 (1977).
5 McCroskey, J. C. Self-report measurements. Avoiding communication: Shyness, reticence, and communication apprehension 81–94 (1984).
6 M・R・リアリィ(生和秀敏訳). 対人不安. (北大路書房, 1990).