法はDPFの提供条件等の開示義務を定めており、DPF提供者は利用者に対してDPFを提供する場合の条件を、利用者の理解の増進が図られるように開示しなければならない(法5条1項、2項、規
35条)とされる。これらの開示によって利用事業者の予見性を高めるとともに苦情等を減らしていくことが重要とされる
4。この点に関する透明性評価における評価は概ね良好なもので、特に楽天及びヤフーによる提供条件の一般向け開示については積極的な取り組み例として評価されている
5。ただし、透明性評価は、提供条件の記載されている膨大な利用規約のなかに、重要事項が埋もれてしまわないような工夫を求めている。
また、提供条件を変更するにあたっては、期間を設けて事前に変更の内容と理由を開示することとされている(法5条4項1号)。これにより利用事業者は準備期間を確保できるとともに、理由が開示されるため、必要に応じて協議を申し出ることが容易になるという効果がある。
この点も9割が一か月以上前に連絡があったなど概ね良好な評価がされているが、Appleの価格設定テーブルの変更通知が変更日の15日前であったことが課題として取り上げられている
6。他方、楽天、ヤフー、Googleは、それぞれ利用事業者の理解促進のために説明会を開くなどの積極的な取り組みを行ったとして評価されている。
取引条件の開示に関連して、処理期間(2021年4月1日~2022年10月31日)に、案件を二件処理したことが透明化評価において公表されている
7。後述の通り、経済産業大臣がDPF提供者の開示に問題があると認められるときは、勧告等の措置をとるとされている権限を用いて、調査等を行ったものである。これらの案件が発覚した契機は明らかではないが、おそらく利用者からの申出によるものと推察される(申出の根拠条文は法10条)。これら2件の案件はいずれも抽象的な内容の公表しかなされていないので具体的な内容は詳細にはわからないが、以下透明化評価より引用する。
一つ目は利用事業者がDPFの利用契約種別を変更する場合に、特定の施策を受け入れることを必須にするという、利用事業者にとって負担となる条件変更を予告なしに行ったものである。本件は法5条4項1号に違反する可能性がある。ただし本件については、施策の延期を公表などしたうえ、不利益解消のための措置を実施し、かつ経産省の調査に協力をしたため指導にとどめたという。なお、最終的に施策の導入を取りやめたとのことである。
二つ目は、利用事業者が提供する商品等にかかるデータをDPF提供者が取得・利用する場合の内容・条件について、利用開始前には開示されていなかった(利用開始後には開示)というケースである。利用条件等について利用開始前に開示すべきことは法5条1項を受けた規5条1項2号で明記されており、法令違反となる可能性がある。ただ、不開示部分がその他の開示部分から推知できたこと、故意的ではなかったこと、及びすぐに修正を行ったことから指導にとどめたとのことである。
これらの案件は指導にとどめられたが、法的な取り扱いとしては、まず経済産業大臣により開示等必要な措置をとるべき勧告および公表を行う(法6条1項、3項)。DPF事業者が正当な理由がなく当該措置を取らなかったときは、当該措置をとるべき命令および公表を行う(同条4項、6項)。この命令に従わなかった者には、百万円以下の罰金が科せられる(法23条)。
開示に関する条項の全体像は図表3の通りである。