予防・管理措置の分類が引き下げられたことによって、それまでの国による厳しい管理は緩和された。一方で、それまで実施されていた医療費の公費負担も見直されることになった。ただし、中央政府は移行緩和措置として、3月31日までは、入院費用については公費負担を継続するとした。一方、外来診療については通常の外来診療の自己負担割合を適用するのではなく、別途定めるよう指示している
4。中央政府は、地方政府に対して、入院、外来診療、治療薬の調達などの対応を以下のように求めている。
1、政府による新型コロナの診療ガイドラインに基づいた入院費用については、公費負担とする。自己負担部分については政府が補助をする。ただし、当座の補助分についてはまず地方政府が財政から拠出し、追って中央政府が実際に発生した費用の60%を補填する。この措置は、患者が入院をした日から3月31日までを期限とする。
2、農村や都市の病院
5のサポート体制を強化する。感染の疑いのある患者の外来、救急外来の診療については、原則的に免責額と給付限度額を設けず
6、自己負担割合を3割以下に設定する。具体的な措置については、公的医療保険制度を管轄する各地の医療保障局が状況に応じて決定する。
3、オンライン診療の活用を推進する。新型コロナに感染し、オンライン診療を受診した場合、初診についてはオンライン決済を推奨し、診療価格、自己負担も対面での診療と同様にする。
4、治療薬などの調達については、各省の医療保障局と医療保険基金が資金の状況や需要の状況に応じて調達をする。
このように、予防・管理措置の分類が引き下げられたことによって、医療給付に関する決定、医薬品の調達は、本来より制度を管轄する地方政府に戻されつつある。また、国による介入や財政的な補填を段階的に縮小しようとする姿がうかがえる。しかし、それを担う地方政府の中には、コロナ禍による不況、不動産不況、土地使用権の規制などから財政難に直面している場合もある。今後、地方政府の財政状態によって、医療給付や給付対象となるコロナ治療薬の多寡が発生し、地域間の医療格差が表面化する可能性がある。
4 国家医保局、財政部、国家衛生健康委、国家疾控局「関于実施"乙類乙管"後優化新型冠状病毒感染患者治療費用医療保障相関政策的通知」2023年1月6日。
5 ここで対象となるのは社区に設置された2級未満の基層病院。中国では都市の末端の行政組織として居民委員会があり、その管轄地域を社区として区分している。また、病院のランクは規模やレベルが高い順に3級、2級、1級となっている。3級病院は大学病院レベルの高度な医療機関(病床数は500床以上で、設置した専門科の数が25以上の病院)、2級病院は地域の中核病院(病床数は100-499床で、設置した専門科の数が21以上の病院)で、それ以下は1級病院の基礎レベルの小規模病院(病床数は20-99床で、設置した専門科の数が9以上の病院)となる。
6 中国の公的医療保険制度は地方政府がその給付内容を定めている。通常の医療給付については、多くの地域で、医療給付の対象となるまで一定額の自己負担(免責額)を設けており、その自己負担額を超えた分の給付についても限度額を設けている。
3――新各都市の対応はバラバラ