子育て中の人々のコロナ禍前後のマスクをつける頻度の変化

2023年01月13日

(岩﨑 敬子)

(村松 容子)

5――子どもの持病の有無別

1子どもの持病の有無別のマスクをつける頻度
さらに、本調査は子育て中の人々を対象にしているため、子の持病の有無によっても、マスクをつける頻度が異なる可能性が考えられるかもしれない。そこで、外出時にマスクをつける頻度を、子の持病の有無別に確認したのが、図5である。子の持病がある場合、子の持病の無い人に比べて、コロナ禍前から常にマスクをつけている人の割合が大きい傾向が見られる。2022年10月時点でも子の持病がある人の方がマスクを常につけている人の割合は大きいが、子の持病が無い人に比べて、差が開いた傾向は見られない。
加えて、職場でマスクをつける頻度を、子の持病の有無別に確認したのが、図6である。子の持病がある場合、子の持病の無い人に比べて、コロナ禍前から常にマスクをつけている人の割合が大きい傾向があるのは、図5で確認した外出時の傾向と同様である。そして、2022年10月時点では、子の持病の有無によって、常にマスクをつけている人の割合に大きな違いは見られない。
2子どもの持病の有無と育児分担割合とマスクをつける頻度の関係
子どもの持病の有無によってマスクをつけるようになるかどうかは、普段子どもとどれくらい関わっているかに依存する可能性が考えられる。そこで、育児分担割合とマスクをつける頻度の関係を確認するために行った線形確率モデルの推定結果が表1と2である。

表1では、被説明変数を、2022年10月時点で、外出時に常にマスクをつけている場合に1を取り、それ以外の場合に0を取るダミー変数とし、表2では、2022年10月時点で、職場で常にマスクをつけている場合に1を取り、それ以外の場合に0を取るダミー変数としている。表1からは、子どもの持病有×育児分担割合の交差項が正で統計的に有意(有意水準10%未満)であり、育児分担割合が大きい人ほど、コロナ禍でマスクをつけていることが確認できる(列2)。さらに、コロナ禍前に常にマスクをしていたかどうかを調整したモデルでも同様の傾向が確認できる(列4)。一方で、表2の推定では、子どもの持病有×育児分担割合の交差項は(列2の推定、列4の推定共に)統計的に有意でなく、外出時にマスクをつける行動と同様の傾向は確認されなかった。

6――おわりに

6――おわりに

本稿では、ニッセイ基礎研究所が子育て中の人々を対象に行った独自のWEBアンケート調査を用いて、コロナ禍前後のマスクをつける頻度の変化について、男女、年齢層、子どもの持病の有無別に確認した分析結果を紹介した。コロナ禍前には、外出時や職場で常にマスクをつけている人の割合は、男女で大きな違いは見られなかったが、2022年10月時点で、外出時や職場で常にマスクをつけている人の割合は男性よりも女性の方が大きかった。また、年齢層別に比較すると、コロナ禍前には低年齢層(34歳以下)でマスクを常につけている人の割合が大きく、高年齢層(55歳以上)ではマスクをつけていない人の割合が大きかったが、2022年10月時点では、低年齢層(34歳以下)でマスクをつけている人の割合は小さく、高年齢層(55歳以上)では、34歳以下を除くその他の年齢層と同程度であった。これらから、コロナ禍でマスクをつけるようになるという行動変容は、男性よりも女性の間で、そして低年齢層よりも高年齢層でより顕著に起こった傾向が示唆された。また、子どもに持病がある場合は、育児分担割合が大きいほど、外出時に常にマスクをつけるようになった傾向が見られた。

ポストコロナの社会で、日本の人々は今後どのようにマスクと付き合っていくことになるのだろうか。人々がマスクをつける理由について今後分析を深めるとともに、動向を注視していく必要があるだろう。
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