初めての保険としての「恵民保」(中国)【アジア・新興国】中国保険市場の最新動向(55)

2022年12月21日

(片山 ゆき) 中国・アジア保険事情

■要旨

地方政府と保険会社が運営する医療保険―「恵民保」は、初めて保険商品に加入するきっかけとなりつつある。ただし、その商品特性から、契約者の大半が40代以上となるなど、今後の運営に注視する必要がある。

■目次

はじめに
1――「恵民保」は市政府が推奨する市民向けの医療保険商品。2021年時点で総人口の1割に
   相当する1.4億人が加入。
2――恵民保の加入者像:契約者の平均年齢は45-50歳で、40代以上が7割を占める。
   ただし、自身ではなく、家族を対象(被保険者)とした加入が7割。
   加入の8割は都市部で会社員が加入する公的医療保険の被保険者。公的医療保険の
   給付がより限定的な都市の非就労者・農村住民向け制度の被保険者は2割未満。
3――恵民保の認知度・市場における浸透度合:都市では大規模都市の一線都市、年齢では40代
   以上で認知度、浸透度合とも高い。
4――民間保険の加入状況:恵民保の契約者のうち、54.4%が初めて民間保険に加入。
   都市の経済規模が小さい五線都市以下では64.8%まで上昇。
   年齢別では24歳以下が62.2%と若年層の方が多い。
5――加入:友人・同僚、SNSをきっかけに知り、価格や政府による安心感が加入動機として
   上位になっている。加入手続きは、テンセントによる恵民保の公衆号、保険販売のオンライン
   プラットフォーマーからが多い。
6――給付:給付に対して満足しているという回答は9割と高い。

保険研究部   主任研究員・ヘルスケアリサーチセンター兼任

片山 ゆき(かたやま ゆき)

研究領域:保険

研究・専門分野
中国の社会保障制度・民間保険

経歴

【職歴】
 2005年 ニッセイ基礎研究所(2022年7月より現職)
 (2023年 東京外国語大学大学院総合国際学研究科博士後期課程修了) 【社外委員等】
 ・日本経済団体連合会21世紀政策研究所研究委員
 (2019年度・2020年度・2023年度)
 ・生命保険経営学会 編集委員・海外ニュース委員
 ・千葉大学客員准教授(2023年度~) 【加入団体等】
 日本保険学会、社会政策学会、他
 博士(学術)

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