寮/社宅に住む人はテレワークで生産性が低下したと感じた傾向-テレワークで生産性が上がった人/下がった人(5)-

2022年10月12日

(岩﨑 敬子) 保険会社経営

1――はじめに

本稿を含めて全8回の基礎研レターでは、2022年3月にニッセイ基礎研究所が独自に行ったアンケート調査のデータを用いて、テレワーク拡大によってどのような人は生産性が高まったと感じ、どのような人は生産性が下がったと感じたのかを分析した結果を紹介していく。本稿ではそのうち、第5回として、住まいの違いに注目した分析結果を紹介する。結果を先取りしてお伝えすれば、寮や社宅、官舎に住む人の人の間では、生産性が低下したと感じた人の割合が大きかった。

2――寮や社宅、官舎に住む人

2――寮や社宅、官舎に住む人の人の間では、生産性が低下したと感じた人の割合が大きい

日本で新型コロナ拡大が始まって以降(2020年1月以降)テレワークを行った人へ、「在宅勤務・テレワークで仕事をする時、勤め先に出社して仕事をする場合と比べて、仕事の生産性をどう感じましたか。」という質問をした際の回答の住まい別の分布を示したのが図1である1。図1からは、寮や社宅、官舎に住む人の間で、「生産性が低下した」もしくは「生産性がやや低下した」と感じた人の割合が大きいことが確認できる。しかし、住まいの形態は、年収や年齢と相関している可能性が考えられる。そこで、図2に年収別に住まい別の分布を示し、図3に、年齢層別に住まい別の分布を示した。これらの図からは、どの年収でも、どの年齢層でも、寮や社宅、官舎に住む人の間で、「生産性が低下した」もしくは「生産性がやや低下した」と感じた人の割合が大きいことが確認できる。
 
1 ニッセイ基礎研究所が実施した独自の被用者を対象とした調査の回答者計5,653名のうち、本質問の対象者となる、日本で新型コロナ拡大が始まって以降(2020年1月以降)一番テレワークを利用した時期に、月1回以上のテレワークを行ったと回答した人は、1,985名。
本調査は、全国の 18~64 歳の被用者(公務員もしくは会社に雇用されている人)の男女を対象に、全国 6 地区、性別、年齢階層別(10 歳ごと)の分布を、2020年の国勢調査の分布に合わせて収集した(株式会社クロス・マーケティングのモニター会員)。調査の概要は以下の基礎研レター参照。
岩﨑敬子(2022年9月14日)「会社員/公務員がテレワークによって感じた生産性の変化概況-テレワークで生産性が上がった人/下がった人(1)―」(https://www.nli-research.co.jp/report/detail/id=72366?site=nli

3――おわりに

3――おわりに

本稿では、ニッセイ基礎研究所の独自調査のデータを元に、新型コロナ拡大以降テレワークを行った人の間では、寮や社宅、官舎(借り上げ社宅や代用社宅を含む)に住む人の間で、テレワークによって生産性が低下したと感じた人の割合が大きい傾向を確認した。この要因については今後の検討課題であるが、のちに紹介するの基礎研レターでも紹介するように2、寮や社宅、官舎に住む人がテレワークを行うようになって生産性が低下したと感じる人の割合が大きい傾向は、年収や年齢層を調整した上でも確認されている。そのため、持ち家に住む人の方が、テレワークを行うためのスペースを用意しやすいなど、テレワークをしやすい環境を作りやすいことが影響している可能性が考えられるかもしれない。
 
2「テレワークで生産性低下/向上を感じた人の特徴-テレワークで生産性が上がった人/下がった人(8)―」(https://www.nli-research.co.jp/report/detail/id=72860?site=nli

保険研究部   准主任研究員

岩﨑 敬子(いわさき けいこ)

研究領域:保険

研究・専門分野
応用ミクロ計量経済学・行動経済学 

経歴

【職歴】
 2010年 株式会社 三井住友銀行
 2015年 独立行政法人日本学術振興会 特別研究員
 2018年 ニッセイ基礎研究所 研究員
 2021年7月より現職

【加入団体等】
 日本経済学会、行動経済学会、人間の安全保障学会
 博士(国際貢献、東京大学)
 2022年 東北学院大学非常勤講師
 2020年 茨城大学非常勤講師

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