新型コロナと少額短期保険

2022年09月01日

(松澤 登) 保険会社経営

■要旨

新型コロナウイルス感染症では第6波、第7波と大量の感染者を出した。このことは約款上の「入院」に新型コロナによる宿泊療養や自宅療養をも含むとする取り扱いとしたことや、そもそも新型コロナ感染自体を給付事由と規定している医療保険に大きな影響を及ぼした。
 
マスコミ報道があったところでは、少額短期保険事業者において、justInCase少短のコロナ助け合い保険の保険金削減と販売停止、および第一スマート少短の特定感染症保険の販売停止が挙げられる。特にjustInCase少短の保険金削減に関しては注目が集まった。
 
保険業法・同規則では、少額短期保険に関して、その約款において「保険料の増額又は保険金の削減に関する事項」を定める必要があり、そしてそのことを重要事項説明書に記載する必要があるとされている。
 
justInCaseの約款や重要事項説明書にも保険金削減に関する記載がある。しかしながら、今回のような保険金削減があることを契約者が必ずしも予期していたものとは思われず、契約者が納得できるものであるかどうかは問題となろう。
 
昨今の少額短期保険制度は新たな保険事業の実験場としての性格が強くなってきている。今回の事例を業界全体としてしっかりと受け止め、適正かつ健全な競争を行っていくための一助としていく必要がある。

■目次

1――はじめに
2――justInCase少短、第一スマート少短の事例
3――保険業法上の建付け
4――約款の記載
5――おわりに

保険研究部   専務取締役 研究理事 兼 ヘルスケアリサーチセンター長

松澤 登(まつざわ のぼる)

研究領域:保険

研究・専門分野
保険業法・保険法|企業法務

経歴

【職歴】
 1985年 日本生命保険相互会社入社
 2014年 ニッセイ基礎研究所 内部監査室長兼システム部長
 2015年4月 生活研究部部長兼システム部長
 2018年4月 取締役保険研究部研究理事
 2021年4月 常務取締役保険研究部研究理事
 2024年4月より現職

【加入団体等】
 東京大学法学部(学士)、ハーバードロースクール(LLM:修士)
 東京大学経済学部非常勤講師(2022年度・2023年度)
 大阪経済大学非常勤講師(2018年度~2022年度)
 金融審議会専門委員(2004年7月~2008年7月)
 日本保険学会理事、生命保険経営学会常務理事 等

【著書】
 『はじめて学ぶ少額短期保険』
  出版社:保険毎日新聞社
  発行年月:2024年02月

 『Q&Aで読み解く保険業法』
  出版社:保険毎日新聞社
  発行年月:2022年07月

 『はじめて学ぶ生命保険』
  出版社:保険毎日新聞社
  発行年月:2021年05月

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