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公開情報から読み取る資金の流れ
公開情報を用いて、ふるさと納税にかかる資金の流れを推計すると、図表2の通りである。資金の流れの始まりは、寄付者から地方団体への①寄付(図表2の濃紺矢印)であり、資料によると、2021年度の寄付総額は8,302億円である。寄付を受け取った地方団体は、このうち、3,851億円を②費用として支出(図表2の青矢印)しているので、寄付を受け取った地方団体の行政サービスに充当されるのは差額の4,451億円、寄付総額の54%(4,451億円÷8,302億円)にとどまる
1。各種事業者に支払われた費用3,851億円のうち、2,267億円は寄付者への③返礼品となる(図表2の水色矢印)ので、各種事業者に残るのは1,584億円である。以上が、寄付から返礼品に至るまでの流れである。
ふるさと納税制度は、地方団体に寄付した場合に税金の控除が受けられる制度である。資料によると、2021年の寄付の結果、④住民税控除という形で寄付者が居住する地方団体から寄付者に5,672億円の資金が移動している(図表2の赤矢印)。ワンストップ特例制度を利用しない限り、住民税だけでなく⑤所得税も控除され、国から寄付者に資金が移動している(図表2の桃色矢印)。所得税からの控除額は公表されていないが、筆者が推計2したところ1,613億円に及ぶ。寄付者にしてみれば、①寄付により寄付者から8,302億円の資金が流出するが、③返礼品として2,267億円、④住民税控除として5,672億円、⑤所得税控除として1,613億円(概算)の資金が流入するので、差し引き1,250億円(概算)だけ流入超となっている。
また、ふるさと納税に伴い減少した税収分の一部は、原則として⑥地方交付税として補われる仕組みになっている。具体的なふるさと納税に起因する地方交付税額も公表されていないが、筆者が推計3したところ、国から寄付者が居住する地方団体に2,991億円の資金が移動している(図表2の橙色矢印)。寄付者が居住する地方団体にしてみれば、④住民税控除として5,672億円の資金が流出するが、⑥地方交付税として2,991億円流入するので、差し引き2,681億円だけ流出超となっている。国にしてみれば、⑤所得税控除として1,613億円、⑥地方交付税として2,991億円の資金が流出するので、合計4,604億円の資金が流出している計算である。