インド政府債務の膨張~インフレ高進で金融引締め、利払い負担の増加が懸念

2022年06月01日

(斉藤 誠) アジア経済

■要旨

インドでは長引くコロナ禍で財政収支の大幅な赤字が続いている。インド政府が今年2月に発表した2022年度予算案では経済の成長促進に軸足が置かれたため、財政赤字が対GDP比6.4%と、3年連続で6%を上回ることとなった。

コロナ禍が続いて政府債務は増大したものの、これまでは世界的な低金利の恩恵を受けて利払い負担が比較的小さかったため債務の持続可能性が大きく懸念されることはなかった。しかし、足元ではインフレ圧力が高まり、インド中銀は金融引締め策に舵を切った。今後国債利回りの上昇を通じて利払い費が増加すると、歳出削減や増税を余儀なくされる恐れがある。特にインフラ開発予算が削減されることになれば、インドの成長ポテンシャルが十分に発揮できなくなるため、政府の財政悪化は軽視できない。

■目次

1――2022年度は中長期的な成長に向けた予算編成なるも、大幅な赤字続く
2――インフレ抑制の利上げで返済負担が増大へ
3――国債の安定消化は可能だが、財政悪化による長期的な影響に注意

経済研究部   准主任研究員

斉藤 誠(さいとう まこと)

研究領域:経済

研究・専門分野
東南アジア経済、インド経済

経歴

【職歴】
 2008年 日本生命保険相互会社入社
 2012年 ニッセイ基礎研究所へ
 2014年 アジア新興国の経済調査を担当
 2018年8月より現職

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