英国GDP(2022年1-3月期)-1月は大きく回復したが、2・3月は停滞

2022年05月13日

(高山 武士) 欧州経済

1.結果の概要:前期比0.8%、回復は続くがペースは鈍化

5月12日、英国国家統計局(ONS)はGDPの一次速報値(first quarterly estimate)および月次GDPを公表し、結果は以下の通りとなった。
 

【2022年1-3月期実質GDP、季節調整値)】
前期比は0.8%、予想1 (1.0%)より下振れ、前期(1.3%)から減速した(図表1)
前年同期比は8.7%、予想(8.9%)より下振れ、前期(6.6%)から上昇した

【月次実質GDP(1-3月)】
前月比は1月0.7%、2月▲0.0%、3月▲0.1%となり、1月は大幅なプラス成長となったが、その後は成長にブレーキがかかった

 
1 bloomberg集計の中央値。以下の予想も同様。

2.結果の詳細:1月は大幅プラス成長だが、2月・3月は停滞

英国の22年1-3月期の実質成長率は前期比0.8%(年率換算3.0%)となり、21年4-6月期から4四半期連続でのプラス成長となった。実質GDPの水準はコロナ禍前(19年10-12月)と比べて0.7%となり、ユーロ圏全体の回復よりも進んだことになる。ユーロ圏主要国と比較すると、フランスより回復は遅れているが、コロナ禍前水準に届いていないドイツ、イタリア、スペインよりは回復が進んでいるという位置にある(図表2)。

月次GDPでコロナ禍後の動きを追うと(図表3)、22年1月は0.7%とオミクロン株の感染拡大で感染防止策を強化(いわゆる「プランB」を導入)した21年12月(前月比▲0.2%)から大幅に反発した(「プランB」は1月19日に在宅勤務勧告の終了、27日に公共の場でのマスク着用や大規模イベントでのワクチン接種証明提示を終了)。ただし、その後の2月(▲0.0%)、3月(▲0.1%)はマイナス成長となっている。
部門ごとの3月の月次GDPの水準(図表3)は、コロナ禍前と比較して、農林水産部門が▲6.3%、生産部門(鉱工業)が▲1.5%、建設部門が2.9%、サービス部門が1.2%であり、農林水産部門と生産部門の回復が遅い。特に生産部門は原材料不足など供給制約の影響が長期化しているほか、年初の嵐によって工場の稼働率が低下したこともマイナス要因となった。
図表4には1-3月の月次GDPの前月比伸び率を示している。サービス部門のうち、2月まではコロナ禍の影響を受けやすい業種(住居・飲食業、芸術・娯楽業)の回復が進み、成長の押し上げ材料となっている。一方、コロナ関連の検査やワクチン接種数が低下したため、医療サービスが特に2月には成長の押し下げ材料となった。また、3月は自動車関連を中心とした卸・小売業が、自動車生産の停滞の影響を受け、不振だった。
成長率を需要項目別に確認すると、1-3月期は、個人消費が前期比0.4%(21年10-12月期0.5%)、政府消費が同▲1.7%(1.5%)、投資が同5.4%(1.1%)、輸出が同▲4.9%(6.9%)、輸入が同9.3%(0.3%)となった。また、純輸出の前期比寄与度は▲4.00%ポイント(1.65%ポイント)だった。コロナ禍前比では、個人消費が▲0.7%、政府消費が6.7%、投資が3.4%、輸出が▲19.9%、輸入が▲9.2%だった。個人消費は依然としてコロナ禍前の水準を割っている。また、EU離脱後の貿易量も少ない状況が続いている。

最後に名目GDPを確認すると、1-3月期は前期比2.5%(21年10-12月期は3.0%)となり、所得別の主要項目のすべてで前期比プラスとなっている(図表5)。
 
 

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経済研究部   主任研究員

高山 武士(たかやま たけし)

研究領域:経済

研究・専門分野
欧州経済、世界経済

経歴

【職歴】
 2002年 東京工業大学入学(理学部)
 2006年 日本生命保険相互会社入社(資金証券部)
 2009年 日本経済研究センターへ派遣
 2010年 米国カンファレンスボードへ派遣
 2011年 ニッセイ基礎研究所(アジア・新興国経済担当)
 2014年 同、米国経済担当
 2014年 日本生命保険相互会社(証券管理部)
 2020年 ニッセイ基礎研究所
 2023年より現職

【加入団体等】
 ・日本証券アナリスト協会 検定会員

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