中村 亮一()
研究領域:保険
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2―EIOPAによる意見の概要
EIOPAは、ESRB(欧州システミックリスク理事会)と協力して、市場条件の予測される変化に対する欧州保険業界のレジリエンスと、それが保険会社に与える潜在的な負の影響を評価するために、定期的にEU全体にわたるテストを実施してきている。具体的には、EIOPAは2011年、2014年、2016年、2018年、2021年に保険ストレステストを実施している。
EU全体のテスト結果は、集計されたデータに基づく報告書を通じて伝えられてきた。過去2回のテストにおいては、EIOPAは、テストから推測されるマイクロプルーデンス情報をよりよく伝えることを目指して、参加者の個々の結果の公表を追求してきた。EIOPAの見解では、個々のストレステストの結果開示は、ストレステストのプロセスにおける論理的なステップであり、それはまた、金融市場、保険業界、保険契約者、その他の利害関係者に対する透明性の行使でもある。
EIOPAは、ストレステストの結果の伝達の透明性を高めることを目的として、参加者に各自のスト レステスト結果を開示するよう促してきた。EIOPAは、個別のストレステスト結果の公表が極めて限られている理由について、2018年に業界から寄せられたフィードバックに留意し、ストレステストの枠組みをさらに強化することに取り組み、業界が表明した懸念に対処してきた。さらに、EIOPAは様々な利害関係者とこの問題に幅広く取り組み、その作業にも彼らのフィードバックが含まれている。加えて、EIOPAは、セクターの特異性とその健全性の枠組みに取り組み、結果の誤解を避けるために公表すべき情報を定義した。
こうした措置にもかかわらず、殆どの保険会社は依然として消極的な姿勢を示しており、個別の開示は業界の標準というよりも例外的なものとなっている。2018年には、個々のデータの公表に同意した会社は42社中わずか4社であったが、前回の調査で同意した会社は44社中わずか8社であった。
欧州の監督機関は、保険業界及びその規制の枠組みは、他の金融セクターと同様のレベルの透明性をもって行動できるだけの、強固で成熟しかつ自信あふれるものであると強く信じている。EIOPAは、業界との対話を継続する一方で、これまで自主的な形式が十分に効果的でないことが証明されていることを考慮して、個々の開示要件を正式なものとするためのさらなる措置を講じる必要があると考えている。
(1) 市場規律を強化する。個々の結果の開示は、参加会社についての関連情報を様々な利害関係者(アナリスト、投資家、保険契約者)に明らかにし、透明性を高め、ひいてはより良い市場規律を提供する。これは全体的に健全な保険産業をもたらすはずである。
(2) 参加者のコミットメントを増やす。上記の結果、個別の開示は、参加者のコミットメントの増加につながり、彼らは結果をより良く説明し、報告されたストレス後の値の背景情報を提供することができる。これはまた、より強固で有用なテストにつながることになる。
(3) 公平な競争の場に貢献する。参加会社によるストレステスト結果の一貫した規律あるコミュニケーションは、歪みを制限し、保険会社及び他の金融セクターとの間の公平な競争の場に貢献する。
3―EIOPAの意見の具体的内容
ソルベンシーII指令 第64条の第2パラグラフ 職業上の守秘義務
パラグラフ1は、管轄当局が、この指令の第34条第4項又は規則(EU)No 1094/2010の第32条に従って実施されたストレステストの結果を公表すること、又はEU全体のストレステストの結果をEIOPAが公表する目的で、ストレステストの結果をEIOPAに伝えること、を妨げてはならない。
EIOPA規則 第22条第1a項 システミックリスクに関する一般規定
1a.当局は、少なくとも年に一度、第32条に従って、金融機関のレジリエンスについてEU全体の評価を実施することが適切かどうかを検討し、欧州議会、EU理事会及び欧州委員会にその理由を通知するものとする。そのようなEU全体の評価が実施され、当局がそうすることが適切であると考える場合、各参加金融機関の結果を開示しなければならない。
4―まとめ
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