PRAの保険監督のエグゼクティブディレクターであるAnna Sweeney氏とCharlotte Gerken氏は、2022年1月12日に保険会社のCEO宛の書簡の中で、2022年の規制当局の目標を概説している。
これによると、「英国の保険業界は、専門分野への移行を含め、形を変え続けている。後者のメリットを認識しながら、ビジネスモデルや運用モデルへの集中度が高まると、効果的なリスク管理と軽減が必要な脆弱性がもたらされる。」と述べている。また、「政府によるソルベンシーIの見直しは、2022年を通じて、PRAと保険会社の両方にとって引き続きの焦点となる。私たちは、実施された場合に、健全性体制とその回復力要件を 英国の保険セクターとそのリスクの形に整合するような改革のパッケージに向けて取り組む。」としている。
具体的な2020年の優先事項の概要は、以下の通りとなっている。
1.財務上のレジリエンス
COVID-19が信用ポートフォリオに与える影響はまだ十分には現れておらず、公的セクター支援スキームが廃止されるにつれ、回復はセクター間で不均等となる可能性が高い。全ての生命保険と損害保険会社は、ポートフォリオ内の信用リスクと準備金への影響を綿密に監視する必要がある。
また、取締役会は、信用格下げと債務不履行のリスク、それが財政状態に与える影響、及び損失から回復する能力を明確に理解していることが期待される。取締役会は、適切なリスクアペタイトを設定し、これらのアペタイトがビジネス全体で実践されるようにし、様々なシナリオに対して自分の立場を評価することで、このリスクに関連する適切なリスク管理を実施する必要がある。
保険会社が経済インフレに関するリスクを監視し、これが保険金請求額に与える影響を理解し、様々なシナリオにおいて、一般的及び社会的インフレが財務上のレジリエンスに与える潜在的な影響を考慮し、慎重な準備金決定に織り込むことを期待する。
なお、このセクターの財務上の回復力は、保険ストレステストによって評価されるが、2022年には、PRAやその他の利害関係者がシステミック・ショックに対するセクターの回復力を評価できるような集計結果を公表する必要がある。
2.オペレーショナルリスクとレジリエンス
サイバー攻撃によるものを含め、企業の規模及び業務機能に応じたハイブリッドな作業環境及び操業上の混乱を管理するための、ダイナミックで効果的なリスク管理の枠組みを構築すし、サイバー脅威に対する回復力をテストすることを奨励する。
3.気候変動から生じる金融リスク
気候変動がもたらす金融リスクの監督を中核的な監督アプローチに組み込む。アプローチは、 2021年気候ビエンナーレ探索シナリオ (CBES)から収集された情報によって知らされる。企業の気候関連財務リスク管理の評価は、監督サイクルの全ての関連要素に含まれる。企業が気候関連の財務リスクを効果的に管理する上で不十分な進展が見られる場合に利用できるよう、様々な監督ツールを引き続き検討する。
4.規制の変更
ソルベンシーIIの見直しについて引き続き政府と協働して、企業の規制上の負担を軽減し、賢明なリスク管理及び政府の優先事項に沿ったインセンティブを有する改革パッケージを提供する。
本年後半に予定されている一連の措置に関する正式な協議に先立ち、レビューの目的に最も合致する可能性のある政策措置に関する詳細な技術的関与を通じて、本年前半に定量的影響調査のデータを拡充する。
保険セクターのための目標を定めた破綻処理制度を策定するために政府と協力する。
リスクに見合ったプロセスと時間を確保するために、ILSビークルや他の保険会社の認可に対するアプローチを改善する方法を引き続き検討する。
5.英国で認可を求める第三国の支店
PRAは、FSMA(金融サービス市場法)のPart 4 Aに基づく申請を一定期間行うよう企業に指示する権限を含め、申請の流れが効果的に管理されることを確保するため、引き続きその権限を行使する。
6.ダイバーシティ&インクルージョン
ディスカッションペーパー(DP)2/218が、企業内の多様性を奨励することにより、金融サービス部門のレジリエンスを支援するという野心を示している。企業がDP 2/21に示されたテーマを検討し、自らのギャップを理解し、組織内においてどこで前進できるかを検討することを期待する。
4―まとめ