ギリシアの三大作図問題については、以前の研究員の眼「
ギリシアの3大作図問題-数学を通じて、ギリシアという国の歴史的位置付けの重みを再認識してみませんか-」(2017.6.19)で報告した。
そこで述べたことを繰り返すと以下の通りとなる。
「定規とコンパスによって作図可能となるには、作図のために必要な点が、(作図可能な数で表された)1次方程式や2次方程式を繰り返し解いて得られる範囲にあることが必要で、そのような条件を満たさない点がある場合には、作図不可能ということになる。」
以上を「ギリシアの3大作図問題」に当てはめてみると、以下の通りとなる。
問題1(円積問題)
半径1の円の面積はπ(円周率)なので、この円と同じ面積を持つ正方形の1辺の長さは√π となる。πは超越数で代数的数ではないので、上記の条件を満たしていない。
問題2(立方体倍積問題)
与えられた立方体の1辺の長さを1とすると、求めたい立方体の1辺の長さXは、X
3=2 ということになるが、これは3次方程式であることから、上記の条件を満たしていない。
問題3(角の3等分問題)
与えられた角をθとすると、cos(θ/3)が分かれば、そこから直線を立てて、半径1の円との交点を求めることで、角を3等分できることになる。
A=cos θ、 X=cos(θ/3)とすると、cosの3倍角の公式(高校の数学で学んだ記憶がある人もあると思われる)により、4X
3-3X-A=0 となる。これも3次方程式であることから、上記の条件を満たしていない。
このように、ギリシアの3大作図問題には無理数が現れてくることになっている。
先の研究員の眼で報告したように、問題2(立方体倍積問題)と問題3(角の3等分問題)は1837年に、フランス人数学者ピエール・ローラン・ヴァンツェル(Pierre Laurent Wantzel)によって解決され、問題1(円積問題)は、1882年にドイツ人数学者フェルディナント・フォン・リンデマン(Carl Louis Ferdinand von Lindemann)によって、πの超越性の証明が行われたことで解決した。古代ギリシアの時代に素朴に感じられた問題が、2000年の時を経て、やっと解決された形になっている。