中村 亮一()
研究領域:保険
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2021年9月22日
自己資本要件の恒久的な削減のみが、保険会社が欧州経済にさらに貢献することを可能にする
ソルベンシーIIのレビューに関する欧州委員会の提案が発表された後、Insurance Europeの副事務局長であるOlav Jones氏は次のように述べている。
「保険会社の自己資本要件を全体的に削減する必要があるというECの承認を歓迎する。ただし、大幅かつ恒久的な資本の減少のみが、保険会社が回復への資金提供とEUのグリーンディール及び資本市場連合の支援への貢献を増やすことを可能にする。これは、保険会社が戦略と投資決定において長期的な見方をしなければならないためである。さらに、大幅かつ恒久的な資本削減により、業界は国際競争力を取り戻すことができる。この資本削減は、欧州の保険契約者に対して非常に高いレベルの保護を維持しながら達成することができる。」
「ECが比例に関して取った措置は前向きなようだ。ただし、新しい報告とグループ要件に関するECの提案には、コストと複雑さが不必要に増加する要素が含まれていることが懸念される。再建と破綻処理に関連する重要な提案もある。これらの提案が必要であり、国際的に合意された基準に沿っているかどうかを評価するために、これらを注意深く検討する。」
「私たちは、ECの広範な提案を引き続き評価する。ただし、全体的な影響は、ECがレベル2の計画を明確にしたときにのみ明らかになる。」
5―AMICEによる意見
2021年9月28日
European Commission Solvency II review proposals: evolution not revolution
欧州委員会ソルベンシーIIレビュー提案:革命ではなく進化
欧州委員会のソルベンシーIIのレビューと、保険及び再保険会社の再建と破綻処理のフレームワークに関する提案の公表に続いて、AMICEは提案と相互・協同組合保険会社への潜在的な影響を評価している。ソルベンシーIIのレビューは、相互及び協同組合の保険モデルをより適切に反映するために、現在の法律の特定の要素を微調整する機会を提供したと信じている。特に、AMICEは、相互保険会社及び協同組合保険会社にとって重要な比例性などの分野の進展を認識しており、その観点から推奨事項を評価している過程にある。
AMICEはまた、保険会社のソルベンシーに関する現在の立法上の取り決めは堅固であり、欧州の保険契約者を保護するのに十分であることを繰り返し述べている。
6―欧州議会議員からの意見
「欧州の保険規則には、スイスチーズよりも多くの穴があり続けている。今日、EU委員会は最終的にソルベンシーIIを厳密に証拠に基づいたものにする機会を逃している。代わりに、殆どのロビー主導の例外はそのままであるか、拡張されている。EU委員会は、EIOPAの推奨事項を無効にし、欧州の保険業界に900億ユーロの即時の資本救済を提供している。保険会社は、長期投資家として、欧州グリーンディールで重要な役割を果たすことができる。しかし、持続可能性とは、保険契約者の権利と金融の安定性を保護することも意味している。これは、正直なリスク測定と適切な資本化でのみ機能する。EU委員会の提案は全体的に間違った方向に進んでいる。
持続可能性のリスクに関しては、EU委員会は、持続可能な金融戦略と銀行セクターの基準に関する独自の発表には達していない。保険会社の内部リスク管理においてのみ気候リスクを考慮することは十分ではない。長期的な持続可能性のリスクも規制に影響を与える必要がある。さらに、監督当局は、銀行のSREP(監督レビュー評価プロセス)で既に一般的に行われているように、持続可能性リスクを評価し、必要に応じて資本サーチャージを課す必要がある。EIOPAに今までに何度もの専門家報告書を作成させ、問題を何年も延期させるだけでは十分ではない。欧州グリーンディールを真剣に受け止めている人は誰でも、2021年に行動しなければならない。
EIOPAの分析は、次のことを示している。新旧の措置の多くは、経験的に正当化することはできない。経済政策の観点からは長期の株式投資が望ましいが、リスクは低いわけではない。将来さらに広く適用される22%の削減されたリスクウェイトは、実際のリスクを適切に反映していない。また、技術的準備金のリスクマージンを大幅に削減することについての説得力のある正当化はない。同じことが戦略的及びインフラ投資の優遇措置にも当てはまるが、これは変更されない。また、将来的には、OECDの国債は、全ての歴史的経験に反して、リスクフリーと見なされる可能性がある。EU委員会の完全なポスト真実のアプローチは、フレームワーク全体の信頼性を損なう。
欧州資本市場連合が機能するためには、欧州保険組合も必要だ。ここで、EU委員会は主要な措置を避けている。EIOPAが推奨する国民保険保証システムの調和は、最大の保険グループの欧州共同監督と同様に、今日の提案には欠けている。これはまた、国境を越えて保険商品を購入するが、均一なレベルの保護に頼ることができない欧州の消費者の保護にも悪影響を及ぼす。」
7―まとめ