所得格差と経済成長の関係-再配分政策が及ぼす経済的影響

2021年08月27日

(鈴木 智也) 成長戦略・地方創生

■要旨

コロナ禍による格差拡大への懸念は、世界共通の課題として意識されつつある。世界に先駆けて景気回復が進んだ米国では、富裕層に対するキャピタルゲイン課税率を引き上げ、その徴収分を子育てや教育支援などに充てようという構想が議論されている。日本では、コロナ感染の抑止という緊急課題への対応を未だ余儀なくされているが、その課題に目途が立つ頃には、生活困窮者向けの緊急支援策が、格差対応という長期的な対応に置き換わっていくものと思われる。これから実施される衆議院議員選挙では、格差是正に向けた「所得分配政策」が主要議題の1つになるだろう。

本稿では、コロナ禍で起きている所得格差の現状について整理し、倫理的な側面から語られることの多い格差問題について、経済学的な視点から捉え直し、所得格差が理論的にどのように解釈されているのかを読み解く。

■目次

1――はじめに
2――「K字型」が示唆するもの
  1|コロナ禍で見られる2つの格差
  2|コロナ禍で見られる非対称な影響
3――経済学的な視点で見る所得格差
  1|「経済成長」 が「所得格差」 に及ぼす影響
  2|「所得格差」 が「経済成長」 に及ぼす影響
  3|格差是正の必要性に関する論調の変化
4――日本における所得格差の現状
5――おわりに

総合政策研究部   准主任研究員

鈴木 智也(すずき ともや)

研究領域:

研究・専門分野
経済産業政策、金融

経歴

【職歴】
 2011年 日本生命保険相互会社入社
 2017年 日本経済研究センター派遣
 2018年 ニッセイ基礎研究所へ
 2021年より現職
【加入団体等】
 ・日本証券アナリスト協会検定会員

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