プラチナ価格は大化けするか?~既に6年ぶりの高水準に浮上

2021年05月07日

(上野 剛志) 金融市場・外国為替(通貨・相場)

■要旨
 
  1. NYプラチナ先物価格1トロイオンス1250ドル前後と約6年ぶりの高水準を回復し、金価格の約7割まで持ち直している。昨年春以降、プラチナ価格上昇を促した要因としては、「経済活動の再開に伴う世界経済の回復」による自動車向け需要等の回復と、「世界的な脱炭素機運の高まり」を背景とした燃料電池用の需要拡大期待が挙げられる。特に脱炭素の一環として、主要国ではガソリン車やディーゼル車の販売禁止方針が相次いで打ち出されていることから、その代替として大量のプラチナを使用するFCV(燃料電池車)が普及することで、プラチナ需要が大きく拡大することが期待されている。
     
  2. 先行きに目を転じた場合、今後もプラチナ価格への追い風は続き、上昇に向かう可能性が高いとみている。今後も世界でワクチンの普及が進むことで経済活動が正常化に向かい、自動車向け需要の回復が続くとみられるためだ。
     
  3. また、今後は水素に絡むプラチナ需要の拡大も期待される。ただし、この実現性については不確実性の高さが否めない。脱炭素機運の後退などの政治的リスクが残るほか、プラチナの供給量が限られていることがFCV普及を妨げる可能性があるためだ。FCV普及のためにはプラチナ使用量の効率化が求められるが、劇的に効率化されたり、高性能な代替材料が開発されたりする場合には、プラチナ需要の拡大に寄与しなくなってしまう。
     
  4. 以上の通り、プラチナ価格には追い風が吹いており、FCVの普及如何で将来的に価格が大きく上昇する(大化けする)可能性もある。しかし、政治的・技術的要因によって普及が頓挫してしまえば価格が下落するリスクもあり、不確実性が高い。投資に当たっては、「脱炭素→水素需要増→プラチナ需要増」という単純な連想に過度に引きずられることなく、各国政府や関連業界の動向を慎重に見定める必要がありそうだ。
■目次

1.トピック: プラチナ価格は大化けするか?
  ・プラチナ価格上昇の要因
  ・プラチナ価格は大化けするか?
2.日銀金融政策(4月):23年度見通しも物価目標に大幅未達
  ・(日銀)現状維持
  ・評価と今後の予想
3.金融市場(4月)の振り返りと予測表
  ・10年国債利回り
  ・ドル円レート
  ・ユーロドルレート

経済研究部   上席エコノミスト

上野 剛志(うえの つよし)

研究領域:金融・為替

研究・専門分野
金融・為替、日本経済

経歴

・ 1998年 日本生命保険相互会社入社
・ 2007年 日本経済研究センター派遣
・ 2008年 米シンクタンクThe Conference Board派遣
・ 2009年 ニッセイ基礎研究所

・ 順天堂大学・国際教養学部非常勤講師を兼務(2015~16年度)

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