関節リウマチの患者を含めて、膠原病の患者は、100万人以上いるとみられる。一方、リウマチ専門医の数は、2019年10月現在で4,878人
49。単純計算でも、専門医1人に対して、200人以上の患者が存在することとなる。すなわち、専門医だけで、膠原病の患者に対処することは不可能である。そこで、患者を日常的に診療する、かかりつけ医の存在が重要となる。
ただ、膠原病は、病気の診断により治療方針が異なる。同じ病気でも、症状の個人差が大きく、治療内容が同じとは限らない。治療期間は、数ヵ月~数十年に及び、完治ではなく寛解の維持が治療の目標となる。また、治療中の疾患活動性の評価も難しい。薬剤療法では、処方に注意を要するステロイド薬が用いられることもある。このように膠原病の医療は、さまざまな点で難易度が高いとされる。
こうした難しい医療を進める際には、患者とかかりつけ医の間の情報のやり取り、すなわちコミュニケーションが重要となる
50。ここでは、入院治療を経て寛解に達し、現在は定期的に通院しているという患者について、外来診療時のコミュニケーションのポイントをみていきたい。
49 「日本専門医制度概報 令和元年度版」(一般社団法人 日本専門医機構)より。
50 もちろん、かかりつけ医と専門医の間のコミュニケーションや、医師と医療関係者(看護師や理学療法士・作業療法士、薬剤師等)の間のコミュニケーションも重要である。これらは、本稿では触れない。
1|検査、問診、診察の結果を総合的にみて診断される
膠原病の外来診療では、さまざまな確認が行われる。外来診療の流れは、他の病気とそれほど異なるわけではない。(必要な場合)検査を受ける、患者から話を聞く、診察をする、検査結果を説明する、治療内容を決める、次回の診療の予約を入れる、処方箋を発行する、という流れだ。
(1) 検査を受ける
血液検査やCT・MRIなどの画像検査の結果は、疾患活動性を評価する際の判断要素となる。一般に、患者は、医師の指示に従って、必要な検査を受けることが求められる。
(2) 患者から話を聞く(問診)
医師にとって、患者の日常生活での症状の経過は、診断の重要な要素となる。検査結果や診察内容を解釈する上で、症状がどう推移しているかが大切である。一般に、患者は薬剤療法を行っている。医薬品の効果がどのように出ているか。どのような副作用が出ているか。これまでに行った診断内容と現在の症状は符合しているか。といった点が、問診のポイントとなる。
なお、一見、膠原病とは直接関係ないと思われる情報であっても、重要な場合がある。たとえば、「最近よく眠れない」「ころんで足にケガをした」「同居の家族が風邪をひいた」といった話があげられる。これらは、医師が、薬剤療法に伴う易感染のリスクなどを知る際に有益な情報となる。
(3) 診察をする
当然、患者の身体所見も大切な判断要素となる。特に、検査結果の解釈に、身体所見の情報が影響を及ぼすことが考えられる。たとえば、関節リウマチの患者で、CRP(C-Reactive Protein, C反応性蛋白)の検査値が上昇しているとする。診察の結果、関節に腫脹や熱感があれば、病状が悪化していることが考えられる。一方、関節に異常がなければ、感染症に罹患しているためと考えることができる。このように、診察時の身体所見により、検査結果の解釈が変わる場合もある。
(4) 検査結果を説明する
検査結果を医師と患者で共有する。
(5) 治療内容を決める
患者への問診、診察での身体所見、検査結果をもとに、医師が治療内容を示す。医師と患者が治療の意義、目標、注意点などを共有したうえで、治療内容を決定する。なお、薬剤療法の処方内容などに変更がある場合、その意義やメリット・デメリットについても共有する。
(6) 次回の診療の予約を入れる
薬剤の処方日数とともに、次回の診療予約を入れる。症状が不安定な場合は、医師の提案に従って短期間で、次回の診療が設定されることもある。
(7) 処方箋を発行する
薬剤の処方日数をもとに、処方箋を発行する。