ESRB(European Systemic Risk Board:欧州システミックリスク理事会)は、10月16日に、欧州委員会の協議に対する見解を公表
4している。これによれば、以下のような意見が述べられている。
ソルベンシーIIは個々の保険会社をより安全にするのに貢献し、EIOPAは新制度を成功させるのに中心的役割を果たした。それにもかかわらず、この枠組みにはギャップも存在し、ソルベンシーIIのレビューは、今後数年間、あるいは状況によってはもっと早く、このギャップを埋めるまたとない機会である。過去数年間、ESRBは、そのシステミックとの関連において、最も関連性があると考えられるトピックについて、以下の観点から見解を示してきた。
(1) ソルベンシーIIにおけるマクロプルーデンスの考慮をより良く反映する必要性がある。
(2) 欧州連合における調和のとれた再建及び破綻処理の枠組みを確立する。
(3) ソルベンシーIIに基づくリスクの適切な捕捉を継続する。
(4) COVID-19の世界的流行に関連する最近の出来事は、保険セクターの強みと弱みに新たな光を当てるものであるため、レビューにおいて分析され、考慮されるべきである。
それぞれの項目の具体的な内容の概要は、以下の通りである。
(1)については、「ESRB理事会は、以下の3つのタイプのツールを規定した報告書を承認している」が、「これらのツールに加えて、回復期間の延長に関する指令2009/138/ECの第138条の規定は、ESRBの役割を明確にすることができ、ESRBがEU内のマクロプルーデンス監視に責任を負うことを考えると、EIOPAが例外的な不利な状況の宣言を行う前に、ESRBが適宜協議を受けた方が自然である」と述べている。
1) 保険者のプロシクリカルな投資行動を防止し緩和するためのソルベンシー・ツール
2) デリバティブによるヘッジや、消費者が利用しやすい償還機能を持つ保険商品の販売など、特定の活動から生じるリスクに対処するための流動性ツール
3) 保険会社が住宅ローンを組成したり、社債に投資したりする場合など、経済への信用供与から生じるリスクに対処するためのツール
(2)については、「このような枠組みは、保険保証制度 (IGS) の分野における更なる調和化とあいまって、金融システムにおける国民の信頼と安定を維持することを助けるとともに、保険契約者を十分に保護し、EUにおける金融の安定性を維持することに貢献するものであり、両目的は対等な立場に置かれるべきである」と述べている。
(3)については、例えば、リスクフリーレートの基幹構造に関して、「最終流動性点を20年から30年に移行し、最終流動性点からUFR(終局フォワードレート)への収束期間を40年から100年に延長すべきとし、最終流動性点でのクリフ効果の発生を回避するために、曲線の補外分は市場データとミックスされるべきである」と述べている。
(4)については、「COVID-19の大流行の影響はまだ終わっていないが、ESRBは最初の教訓を引き出すことが重要であると考えている。ESRB理事会は、強調したい5つの教訓を特定した」として、以下の5点を挙げている。
1) 経済の機能にとって特定の保険活動が制度的に重要である。
2) 必要に応じて追加的な回復力を提供する事前の資本のバッファーを構築する必要性
3) 監督当局が配当支払を阻止する力
4) ソルベンシー比率のボラティリティ
5) 保険会社に対する流動性リスク管理要件を強化すべきであり、流動性モニタリングを改善すべきであり、監督当局は流動性に対処する権限を必要としている。
5―まとめ