コラム

パスワード付きZIPファイルとセル結合の廃止-進む政府について行かねば…

2020年11月30日

(中嶋 邦夫) 公的年金

つい先日、法令の条文を確認するために「e-Gov法令検索」を利用したところ、インターフェイスが変わっていて驚いた。条文をローカルファイルとして保存する際、従来はコピー&ペーストなどを行う必要があったが、各種のファイル形式で保存できるようになっていた*1
検索したところ、e-Govの改修は以前から計画されていたことが分かったが、同時に、最近の政府におけるデジタル改革の動きが話題になっていることを知った。特に話題になっているのは、電子メールに電子ファイルを添付する際のパスワード付きZIPファイルとパスワード後送(いわゆるPPAP)の廃止*2と、Excel形式の統計表におけるセル結合等の廃止のようだ。
電子メールにファイルを添付する際のパスワード付きZIPファイルとパスワード後送は、10年前くらいから始まっただろうか。いまは慣れてきたが、当初は「セキュリティ対策とはいえ面倒だなぁ」と思っていた。ただ近年は、パスワード付きZIPファイルではメールサーバでウイルス等を確認ができない点などが、問題とされてきた。

Excelにおけるセルの結合は、見た目を簡潔にする利点はあるが、統計表をデータとして利用する際には障害になってきた。セルの結合以外に、同一セル内に複数の情報が入っている場合や、数値が文字列として保存されている場合なども、問題となってきた。筆者はExcel形式で公開されているデータを扱う際に面倒さを感じていたが、変更案によると、政府統計の総合窓口(e-Stat)で可能になっているWeb APIを経由したPython等でのデータ処理でも問題になっていたようだ。
このような古い仕組みの見直しに加え、新しいデータや分析ツールの提供も進められている。以前に紹介した「地域経済分析システム(RESAS)」も更新が続けられ、現在は新型コロナウイルス感染症が地域経済に与える影響を可視化するための「V-RESAS」も公開されている。
筆者はフロッピーディスクを郵送したり国会図書館で書き写した統計を手入力したりしていたので既に隔世の感があるが、70歳現役社会に向けて、今後の変化にも追いついていきたい。
 
*1 ただ、xmlでは条項ごとにタグが付されている一方で、rtfやpdfにはアウトラインや目次が付されておらず不便だった。今後の改善を期待したい。
*2 話題化の発端となった11月16日の平井デジタル相と河野行政改革相とのオープン対話では具体的な対応策が示されなかったが、同月24日の平井デジタル相の定例記者会見では、同月26日から内閣府と内閣官房で同方式でのメール送付を廃止する予定が示された(本稿執筆時点で内閣府のWebページでは会見要旨が未公開だが、政府インターネットテレビ同相のYouTubeチャンネルで公開されている)。やや拙速な印象も受けるが、これを嚆矢に平易で安価な代替手段の開発や普及を期待したい。

保険研究部   上席研究員・年金総合リサーチセンター 公的年金調査室長 兼任

中嶋 邦夫(なかしま くにお)

研究領域:年金

研究・専門分野
公的年金財政、年金制度全般、家計貯蓄行動

経歴

【職歴】
 1995年 日本生命保険相互会社入社
 2001年 日本経済研究センター(委託研究生)
 2002年 ニッセイ基礎研究所(現在に至る)
(2007年 東洋大学大学院経済学研究科博士後期課程修了)

【社外委員等】
 ・厚生労働省 年金局 年金調査員 (2010~2011年度)
 ・参議院 厚生労働委員会調査室 客員調査員 (2011~2012年度)
 ・厚生労働省 ねんきん定期便・ねんきんネット・年金通帳等に関する検討会 委員 (2011年度)
 ・生命保険経営学会 編集委員 (2014年~)
 ・国家公務員共済組合連合会 資産運用委員会 委員 (2023年度~)

【加入団体等】
 ・生活経済学会、日本財政学会、ほか
 ・博士(経済学)

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