ここでは、EIOPAによる情報要求の内容について報告する。
1|元々の情報要求(第1のHIA)
EIOPAは2020年1月29日に、ソルベンシーIIレビューに関して、全体影響評価(Holistic Impact Assessment:HIA)を行うために、各国監督当局からの情報要求を3月2日から開始することを公表
4した。これによれば、以下の通りである。
(1)概要
EEA(欧州経済領域)からのソルベンシーIIの対象となる保険及び再保険会社は、ソルベンシーIIの2020年レビューに関する助言ドラフトと会社のソルベンシーポジションへの重大な影響を組み合わせた影響に関する情報を提供するように求められる。
情報要求は、ソルベンシー計算の以下の導出に関連する変更の複合的な影響に関するものである:リスクフリーレートの期間構造、技術的準備金、自己資本、SCR(ソルベンシー資本要件)及びMCR(最低資本要件)
各国監督当局は、情報要求に参加する代表的なサンプル会社に連絡することが求められる。
なお、EEA加盟国ごとに、サンプルに属する会社は各国の監督当局により選択され、ソルベンシーIIの対象となるローカル市場における会社の少なくとも50%(生命保険の場合の技術的準備金及び損害保険の場合の保険料で測定)をカバーすることが求められる。ソルベンシーIIの適用範囲の変更(ソルベンシーII指令第4条の改訂案)は、サンプルを構成し、その市場シェアを決定する際に考慮に入れることができる。
(2)一般的なアプローチ
参加者は、以下の3つのシナリオに従って、ソルベンシーポジションに関する情報を提供することが求められる。
1) ベースラインシナリオ::ソルベンシーIIの現在の法的枠組み
2) シナリオ1:EIOPAの暫定的な助言に従ったベースラインの変更
3) シナリオ2:シナリオ1と同じだが、SCR標準式の金利リスク較正は変更されない
シナリオごとに、次のタイプの情報を提供する必要がある。
・VA(ボラティリティ調整)を使用する場合は、通貨ごとの会社固有のVA
・技術的準備金(全体として算出した最良推定値、リスクマージン、技術的準備金)
・SCRとMCRをカバーするために利用可能な自己資本と適格自己資本
・SCR及び標準式で計算される範囲で、モジュール、サブモジュール、繰延税金及び技術的準備金の損失吸収能力の調整、オペレーショナル・リスクに対する所要自己資本に関する情報
・MCR及びその構成要素(フロア、シーリング、線形生命保険要素、線形損害保険要素)
・さらに、これらのいくつかの計算に関する背景情報
シナリオに加えて、スプレッドリスクに対する自己資本要件をSCR標準式で計算し、VAを適用する参加者は、動的VAを考慮しつつ、スプレッドリスク・サブモジュールを再計算することが求められる。
シナリオに加えて、参加者は、EIOPAが現在検討している圧縮スプレッドに対する自己資本バッファーの最大影響に関する情報を提供することが求められる。
シナリオに加えて、金利リスクに対する資本要件をSCRの標準式で計算する参加者は、2つの代替的な較正に基づいて金利リスクに対する要件を計算することが要請される。これらの計算はオプションである。
シナリオ計算の基準日は2019年12月31日である。
(3)シナリオ1の技術的仕様
シナリオ1の技術的仕様については、EIOPAの暫定的な助言に従っているものであり、その具体的な内容については、EIOPAの今回の情報提供に関する技術的仕様や保険年金フォーカス「
EIOPAがソルベンシーIIの2020年レビューに関するCPを公表(1)~(16)」(2019.10.29~2020.4.1)等を参照していただくことにして、ここでは説明しない。
(4)スケジュール等
保険及び再保険会社は、2020年6月1日(COVID-19の影響で、最初に公開された3月31日の期限を延長)までに完成した報告テンプレートをそれぞれの国の監督当局に提出する必要がある。テンプレートは、技術的仕様の指示に従い、技術情報を考慮して記入する必要がある。
なお、情報開示請求の結果については、2020年のソルベンシーII見直しに関する意見書の一部として、2020年12月に、企業データの機密性を確保するために匿名化又は集計された方法でのみ開示されることになる。