中国、新型コロナ後の財政政策と社会保障財政

2020年11月18日

(片山 ゆき) 中国・アジア保険事情

■要旨

新型コロナウイルスへの対応が続く中、各国では様々な財政政策が実行されている。

中国は、これまでの大規模減税・社会保険料負担の減免や地方を中心とした公共投資といった景気対策は維持しつつ、新型コロナ対策として赤字枠の拡大や特別国債の発行など積極的な財政出動を行っている。中央財政から地方財政への財政移転は前年比12.8%増と増加しており、特に被害の大きかった行政の末端地域への支出も創設されている。

2008年のリーマンショック後のインフラ投資を中心とした4兆元の財政出動と比較されることもあるが、今回は、公共衛生や感染症対策、更に、雇用、国民の生活、それを支える地方末端行政へのサポートなど、より暮らしを支える施策となっていると言えるであろう。

ただし、地方政府に対してインフラ投資を中心とする特別債の発行枠が拡大されており、一般債を加えた地方財政が抱える債券の残高が中央財政による国債の残高を上回っている点には留意が必要であろう。新型コロナ後の生活を支える社会サービスは地方政府が担っており、地方財政の悪化が市民の暮らしに大きな影響を与える可能性があるからである。

■目次

1――はじめに
2――【財政収支】中国の財政は収支が悪化、年々財政赤字が拡大している
3――【コロナ後の積極財政】「六穏」、「六保」を支える5つの財政政策 
4――【社会保障財政】社会保険料の減収でインパクトが大きいのは年金保険料。主に省の
   年金積金の財源移転、特別補助金で補填。
5――おわりに

保険研究部   主任研究員・ヘルスケアリサーチセンター兼任

片山 ゆき(かたやま ゆき)

研究領域:保険

研究・専門分野
中国の社会保障制度・民間保険

経歴

【職歴】
 2005年 ニッセイ基礎研究所(2022年7月より現職)
 (2023年 東京外国語大学大学院総合国際学研究科博士後期課程修了) 【社外委員等】
 ・日本経済団体連合会21世紀政策研究所研究委員
 (2019年度・2020年度・2023年度)
 ・生命保険経営学会 編集委員・海外ニュース委員
 ・千葉大学客員准教授(2023年度~) 【加入団体等】
 日本保険学会、社会政策学会、他
 博士(学術)

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