2|ソルベンシーIIの2020年レビュー
ソルベンシーIIの2020年レビューについては、当初2020年6月末までにEIOPAが助言を作成し、欧州委員会に提出することで、欧州委員会での検討が進められ、2020年末までに必要な法令等の改正が行われる予定になっていた。ただし、COVID-19の影響により、このスケジュールは6ヶ月間延期され、EIOPAの助言は2020年末に、欧州委員会での対応は2021年上半期を目処に行われることに変更されている。
このソルベンシーIIの2020年レビューの状況についても、これまでの保険年金フォーカスや基礎研レポートにおいて、「
EIOPAがソルベンシーIIの2020年レビューに関するCPを公表(2)~(16)」(2019.11.5~2020.4.1)等で報告してきた。
その中では、例えば以下のような提案がなされていた。
・ユーロのリスクフリー金利を補外する際に、より遅い開始点を選択するか、又は開始点を超えた市場情報を考慮するために補外法を変更する検討
・特にオーバーシュート効果に対応し、保険負債の非流動性を反映させるために、リスクフリー金利に対するボラティリティ調整額の算出方法を変更することを検討
・金利リスク・サブモジュールの較正を経験的証拠に沿って増加させる提案。この提案は、2018年にソルベンシー資本要件の標準式に関してEIOPAが提供した技術的助言と整合的である。
・ソルベンシーII指令にマクロ・プルーデンス手法を含める提案
・保険のための最低限の調和された包括的な再建・破綻処理の枠組みを設定する提案
今回のCOVID-19の感染拡大やそれに関連しての金利低下のさらなる進行が、これらの検討状況にどのような影響を与えるのかが注目されることになる。
なお、「報告と開示」については、別途のCP(コンサルテーション・ペーパー)等も公表され、目的適合性、比例性、データの標準化及び金融セクター内の報告枠組み間の一貫性といった主要原則に基づいた評価が行われてきている。
なお、ソルベンシー規制に関しては、IAIS(保険監督者国際機構)によるICS(保険資本基準)の開発の検討が行われており、この実際の監督基準としての適用は2025年以降と予定されている。それまでは引き続き、欧州におけるソルベンシーII制度が、実際に監督基準として機能している経済価値ベースのソルベンシー制度として、引き続き注目を浴びていくことになる。
さらには、2020年6月25日には、IFRS第17号(保険契約)の修正基準が公表された。現在、この修正IFRS第17号の公表を受けての欧州での対応について、EFRAG(欧州財務報告諮問グループ)での検討が進められており、注目されるものとなっている。
ソルベンシーIIやICS等のソルベンシー規制、さらにはIFRS第17号を巡る状況及びそれらへの欧州の大手保険グループの各種対応については、日本の保険会社等にとっても大変関心が高く、参考になることが多いことから、今後とも継続的にウォッチしていくこととしたい。