新しい金融サービス仲介法制-「フィンテック法」の制定

2020年06月24日

(松澤 登) 保険会社経営

■要旨

第201通常国会で成立した「金融サービスの提供に関する法律」は、主には電子決済代行業者等のフィンテック会社に、銀行商品、保険商品、投資商品等の販売の仲介を認めるものである。現行法では、一般的に、金融機関からの委託を受け販売を行うこととされており、所属金融機関からの指導監督を受け、不適正な行為に関する賠償責任は所属金融機関が負うこととされている。
 
金融サービスの提供に関する法律は、新たに金融サービス仲介業を認めた。金融サービス仲介業者は、登録することにより、銀行業、保険業、金融商品取引業、貸金業の仲介を業として行うことができる。金融サービス仲介業者は金融機関から独立した事業者として、金融機関から指導監督を受けることなく、また賠償責任は金融サービス仲介業者自身が負うこととなる。
 
金融サービス仲介業者は、各業法を、金融サービスの提供に関する法律が準用することにより、行為規制が行われる。また、賠償責任を負う可能性があることから、一定の財産規制を受け、かつ顧客資産の預け入れを受けることはできない。
 
電子決済代行業者や資金移動業者などが金融サービス仲介業者となることで、日本におけるフィンテックが一層加速することが期待される。

■目次

1――はじめに
2――現行法において金融サービスの仲介に関する可能なスキーム
3――金融サービスの提供に関する法律による新たなスキーム
  1|金融サービス仲介業の定義
  2|金融サービス仲介業の登録
4――金融サービス仲介業にかかる規制の概要
  1|金融サービス仲介業者の法的な位置づけ
  2|金融サービス仲介業者の財産規制
  3|金融サービス仲介業者の業務規制
  4|保険媒介業務に対する行為規制
5――おわりに

保険研究部   専務取締役 研究理事 兼 ヘルスケアリサーチセンター長

松澤 登(まつざわ のぼる)

研究領域:保険

研究・専門分野
保険業法・保険法|企業法務

経歴

【職歴】
 1985年 日本生命保険相互会社入社
 2014年 ニッセイ基礎研究所 内部監査室長兼システム部長
 2015年4月 生活研究部部長兼システム部長
 2018年4月 取締役保険研究部研究理事
 2021年4月 常務取締役保険研究部研究理事
 2024年4月より現職

【加入団体等】
 東京大学法学部(学士)、ハーバードロースクール(LLM:修士)
 東京大学経済学部非常勤講師(2022年度・2023年度)
 大阪経済大学非常勤講師(2018年度~2022年度)
 金融審議会専門委員(2004年7月~2008年7月)
 日本保険学会理事、生命保険経営学会常務理事 等

【著書】
 『はじめて学ぶ少額短期保険』
  出版社:保険毎日新聞社
  発行年月:2024年02月

 『Q&Aで読み解く保険業法』
  出版社:保険毎日新聞社
  発行年月:2022年07月

 『はじめて学ぶ生命保険』
  出版社:保険毎日新聞社
  発行年月:2021年05月

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