韓国政府は2月28日に、新型コロナウイルスの感染拡大により被害を受けた中小企業などを支援すると共に個人消費を持ち直すために、総額16兆ウォン規模の景気対策を実施すると発表した。16兆ウォンは、韓国政府が新型コロナウイルス対策のために投入するとすでに発表した4兆ウォンに加えて支出される予定であり、景気対策の規模は2015年に中東呼吸器症候群(MERS=マーズ)が発生した時の約10兆ウォンを大きく上回っている。韓国政府が発表した景気対策の内容は、大きく1)防疫支援、2)消費活性化、3)自営業者や小商工人(常時10人未満の労働者を使用する企業)及び中小企業支援対策、4)その他の対策に区分することができる。その主な内容は次の通りである。
1)防疫支援
感染者が集中している大邱や慶北地域の医療機関や脆弱階層に対して総計700万枚のマスクが無料で支給される。また、バスやタクシードライバーなど、人と接触が多い職種に従事している人に対して約150万枚のマスクを優先的に支給する。
2)消費活性化対策
クレジットカード決済に対する所得控除率を使用金額の15~40%から30~80%に拡大・適用すると共に自動車購入時に適用される個別消費税を70%引き下げる(上限は100万ウォンで2020年3月から6月までに臨時的に実施)。また、地域における消費を喚起・下支えするため、地域限定商品券の発行規模を3兆ウォンから6兆ウォンに拡大し、商品券購入時の割引率を5%から10%に拡大・適用する。さらに、省エネ家電を購入した場合には支払い金額の10%が還元される。
3)自営業者や中小企業・小商工人に対する対策
零細自営業者に対して付加価値税の減税を来年末まで実施する。これにより約90万人の零細自営業者の税負担が1年基準で平均20万ウォンから80万ウォンの間で減り、2年間で総額約8000億ウォンが減税される。また、超低金利融資の規模を1.2兆ウォンから3.2兆ウォンまで増額し、小商工人に対する経営安定資金融資の貸出金利も2.3%から1.5%まで引き下げる。
さらに、民間の建物の持ち主が小商工人の賃貸料を引き下げると、引き下げた金額の50%に相当する金額を所得税や法人税から減免すると共に、政府が所有している建物などの賃貸料も今年末までに3分の1水準まで引き下げる。
4)その他の対策
保育園の休園などにより緊急に保護者が休暇を使った場合、所得が減少することを補償するために8歳以下の児童を養育する保護者を対象に1日5万ウォンを最大5日まで支給する(夫婦合算で最大50万ウォンが支給される、ひとり親世帯は最大10日間利用可能)。また、高齢者就業支援事業(高齢者の雇用支援のために高齢者だけが支援できる業務を紹介する事業)に参加している高齢者が報酬の30%を商品券で受け取った場合、総報酬の20%にあたる商品券を追加的に支給する。さらに、低所得層には9万ウォン相当の商品券を支給する。
また、韓国政府は3月4日に、上記の16兆ウォンの景気対策とは別に、新型コロナウイルスの感染拡大による被害を最小化するための防疫強化と中小企業支援のために11.7兆ウォン規模の追加補正予算案を編成した。予算は感染病の検疫と診断、防疫体制の高度化、被害を受けた中小企業への支援、消費促進や雇用安定支援などに使われる予定である。
韓国政府が20兆ウォンに達する景気対策と11.7兆ウォンの追加補正予算案を合わせて31.7兆ウォンの財源を投入すると発表した理由は、2003年や2012年に流行したサーズ(SARS)やマーズ(MARS)に比べて今回の新型コロナウイルスの感染拡大が韓国経済により大きな被害を与える可能性があると判断したからである。
韓国政府のこのような景気対策が新型コロナウイルスにより被害を受けた自営業者や中小企業、そしてすべての国民に勇気や希望を与え、苦難を乗り越える力に繋がることを心からから願うところである
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